第5話 王家の術
部屋には様々な品があり、小さな櫛や鏡、青銅の香炉、陶器の人形、玉の飾りなどが所狭しと置かれていた。どれも精巧で、作り手の技術の高さがうかがえる一級品だったが、子供である
父親から気になるものはどれかと聞かれ、何気なく部屋の中を見回したとき、布で覆われた衝立が目に入った。
「父上、あれは何ですか?」
聞かれた父親が意味ありげな笑みを浮かべながら衝立に近づき、ゆっくりと布を外した。
「ひっ!」
「はは、
父、
「ど、どういうことですか父う……あれ?」
わけがわからず混乱している
「これは
「
「そうだ。昔王家の者によってこの絵に封じられたが、それでも人を惑わす力を持っていたため、誰にも見られないように隠していたのだ。しかし先々代の頃にうっかり人手に渡ってしまったことがある」
「え、大丈夫だったのですか?」
「大丈夫ではない。一人食われた」
「食われた?? この鬼は絵から出てくるのですか?」
「そう怯えるな。どうやって食ったのかはわからないが、食われたものはこの絵に魅入られていたらしい。お前はこれを美しいと思うか?」
「思いません!」
「そうだろう、私にもこいつは醜悪な化け物に見える」
そう言いながら
「父上!」
一瞬、女の顔が苦々し気に歪んだように見えたが、すぐに朗らかな笑みに戻った。
「おそらく、正体を見抜いている者には手出しできないのだろう」
なおもペシペシと絵を叩いていた
「なんだ、
「母上とこれを比べるのですか!?」
咎めるような息子の表情に苦笑しつつ、
「良いか
「ちから?」
「そうだ。悪しきものを
先ほどまでの笑顔が消え真剣に語る父親の姿に
「
「力を使うためには正しく学び、修練をする必要がある。お前ももう少ししたら始めよう。王家の秘術を受け継ぐことができるよう、しっかりやるのだぞ」
(
「ねえ、
話しかけられ我に返った
「王家の噂って有名だから、本当に呪術が使えるのか気になって。ずっと前に王家の絵が人を食べたって言われてるけど、そんなことできるの?」
「あれは事故だ」
「え! 本当に食べちゃったの?」
「そうらしい。先々代の頃にその絵を持ってた人が食われたって聞いた」
「それって先々代当主様が呪術を使ったの? 食べられた人は王家と仲が良くなかったんだよね?」
「父上はうっかり人手に渡ってしまったって言ってた。おまえも王家が邪魔者を呪い殺してるって噂を信じるのか?」
「あ、ごめん。嫌な気持ちにさせるつもりはなかったんだ。でも本当に人を食べる絵があるなら、
「俺はまだ教えてもらってないから使えない」
「使えるようになったらどうなるの?」
「どうなるってなんだよ。俺が人を殺すとでも思ってるのか? いいか、そんなことはありえない。だいたいあの絵だって先祖が
「そうなんだ。じゃあ、噂は嘘なんだね」
「おまえが不安に思うようなものじゃない。俺はこれから邪悪なものに立ち向かう力を正しく使えるようになるために学ぶんだ。だから怖がるなよ」
「怖がってないよ。ただ
「そんなことしないって。約束する。今後もし妖怪なんかが人を襲うことがあれば俺が倒すし、おまえを守ってやる」
「ふふ、ありがとう。でも僕はけっこう強いんだよ」
「え? 全然強そうに見えないけど」
「見た目で判断しないで。武術を習ってるし、武器がなくても戦えるんだから」
外見からは一切そう思えないため、
「おまえの腕前がどれくらいなのか俺がみてやるよ。言っとくけど俺は強いからな」
「怪我させたくないからいやだよ」
「なんだよ。やっぱり本当は強くないんだろ。俺は本当に強いけどな」
「僕だって本当に強いよ」
しばらく子供らしい言い合いが続いたが、最終的には勝負をすることになった。
「よし、じゃあ負けたやつは勝った方のお願いを聞くってことでいいな?」
「うん、いいよ」
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