第3話・天国に一番近い……


なんか嫌な予感がするが、気にしないでおこう。

今は「モール」とか言う街に向かうのが先決だ。

「しおり」にある街道は無いけど、転移の位置が少しずれてるだけって事かもしれない。街道は北から南に貫いているって事だから、東か西に向かえば街道にぶつかるはずだ。


俺ってば、頭イイ!!


よし!まずは、方角の確認だ。

これは簡単にわかる、俺にはレーダーのスキルがあるからだ。

レーダーを起動すると、視界の隅にレーダー画面が表示された。

うむ、方角も「N」「S」って表示されてる。

じゃ、東はこっちかな?


「…………海」


目の前には海が広がっていた。


いやぁ~「海」ですかぁ~。海じゃ仕方ない。

泳ぐって手もあるが、今回はやめておこう。

という事で「西」に行くことに決定!西は背中側だ。うん、頑張って歩こう。

では、西に振り向いてと……。


「………森か…」


森です。ガッツリ木が生えてます。まっすぐ歩くのも大変そう。

でも行くしかない。ええ、行きますよ。行きますとも………。行くのかぁ~。

無理じゃね?だって道が無ぇもの。獣道すら見当たらんのよ。

どうする?切り開くか?どうやって?役に立ちそうなのは、袋にあったナイフくらいだぞ。護身用のナイフじゃ森は切り開けんだろ?

しょうがねぇ~かぁ~。とにかく進まないと、どうにもならないしなぁ~。


無理矢理、森に分け入って10分もしない内にヘコタレました。

ボクたん都会っ子だから、こういう自然って苦手なんだよねぇ~。

なんかジメジメしてるし、変な虫がいっぱい飛んでるし……。

足下の根っこは鬱陶しくて歩きづらいし……。ああ~早く街道に出ないかなぁ~。

なんてブツブツ言いながら道無き道を進んでいると、ちょっとづつではあるが森に傾斜がついてきた。

キッつぅ~……なんか登ってる感じがするんですけどぉ~。

何ですか?この上、山登りでもさせるんですか?勘弁して下さい。


ボクぁ~これでもダンジョンマスターだったりするんですがねぇ。

ダンジョンマスターってのは、あれですよ。ダンジョンのマスターですよ。

紅茶の美味しい喫茶店のマスターとはひと味もふた味も違うんですよ。

ダンジョンに引きこもっても良いマスターなんですよ。わかってるのかなぁ。


そんな事を言っていても傾斜はどんどんキツくなってくる。

気が付けば完全に山登り状態になってる。一体どんな場所に転移させたんだ。

クソ女神がぁ~。頂上まで行ったらちゃんと街道があるんだろうな!

なかったら「女神のバカヤロー」って叫んでやるゾ!

よくわからない怒りを糧に気力を振り絞って上を目指した。


どれくらい経っただろう?どうにか頂上らしい開けた場所にたどり着いた。

これで山登りは終わりだ。後は街道までまっしぐらのはずだ。

それに高い位置からなら、景色を見ればどの方角に進めば良いか簡単にわかるはずだ。

そう期待しつつ俺がそこで目にした風景は「海」だった……。


そうそこには間違う事無き「海」が広がっていた。

実はさぁ~。何となくわかってたんだよねぇ……。

皆さんだってわかってたでしょ?

ただ、現実を受け入れたくなかっただけなんだよね。

転移した場所が「島」だって事を信じたくなかったんだよ。

ここが絶海の孤島で、しかも無人島だって事。

そんな場所に堕とされたなんて……。


どうしよう……。これじゃ冒険どころじゃないやん。

それどころかサバイバルやん。


「今度の世界は難易度高いわよ」


女神さんが言ってました。


そりゃそうだ。だってサバイバルだもん。

鯖が威張ってるんだもん。難易度も高くなるわさ。


俺のスキルって食料とか製造できるのかなぁ?

てか、水はどうしよう?家は?まさか一生この島で生きなきゃいけないの?

何してくれちゃってんだよ。あのクソ女神がぁ!!!

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