第2話・冒険が始まる?


頬に当たる心地良い風から潮の香がする。

そして、潮騒の音……。


気が付くと俺はどこかの浜辺にいた。


目の前には、白く美しい砂浜に波が打ち寄せている。

そして海は何処までも青く透き通っていた。


美しい……。ただ、美しい。そのひと言に尽きる。


『天国に一番近い島』


チープだけど、そんな言葉が思い浮かんだ。


俺は再び『転生』して、この美しい浜辺に立っていた。


俺の転生を祝福しちゃってるのかな?女神様、イイ仕事してくれるじゃん。


とは言え、ここでボーっとしていても仕方ない。

また、変にドジったりすると女神様に怒られちゃうからね。


ちゃ~んと考えてますよ。

まずは、現状確認をしないとね。

そこで吐くセリフはファンタジーの定番のこれです。


「ステータスオープン!」


すると、目の前に透明なちょっと大きめのタブレットみたいな板が現れた。


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名前 トウマ

職種 ダンジョンマスター

レベル ---

HP ---

MP ---

STR ---

DEX ---

VIT ---

AGI ---

INT ---


魔法


「全属性魔法」「空間魔法」


耐性




スキル


「ダンジョン構築」「物質創造」「魔道具制作」「ゴーレム制作」

「レーダー」「鑑定」「錬金術」「魔法陣」


ユニークスキル


「死に戻り」


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……?なんだこれ?

パラメータがなんか変。

魔法はなんか使えるっぽいけど、耐性が何も無いってのはちょっとキツイかなぁ。女神様がいってた難易度の高さがこれかな?

しかし、生産系のスキルが多いのは助かる。これならなんとかなりそうだ。

あと、ユニークスキルの「死に戻り」ってのは、あれかな?俗にいう「デスルーラ」ってヤツかな?装備とか持ち物が無くなるヤツでなければ良いんだけどなぁ。


あ!そうだ。女神様が読んでおけって「たびのしおり」を渡されたんだっけ。

読んでおかなきゃな。


尻のポケットに突っ込んでおいた「たびのしおり」を引っ張り出してみた。

わら半紙にガリ版刷りで変なウサギとタヌキのキャラクター。

『昭和臭』たっぷりの文庫版サイズの薄い小冊子のページをめくる。

書き出しはこんな感じだった。


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異世界にようこそ!!


ここはラノベによくある異世界です。

もちろん、魔法と剣の世界。ただほんの少し違いがあります。

定番のゲームの様な設定じゃありません。


元気よく「ステータスオープン!!」って叫んだあなた。ごめんなさい。

いくら叫んだところで「ステータス」開きません。

何せこの世界は「レベル」や「パラメータ」なんて概念が無いんですからね。

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……?えっと……。ステータス開いてるんですど……。


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但し、この世界は鍛えたら鍛えた分だけ無限に成長できます。

この世界で重要なモノは「経験」です。好奇心を持っていろいろな事を「経験」し、覚え繰り返し作業することこそが成長の近道です。

時間を有効に使って「魔法」や「剣」その他の事を鍛え上げていきましょう。

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ん~……。俺のレベルやパラメータの表示が変なのはコイツが原因らしいな。

なんかバグってるんかな?ま、いいや俺は「ダンジョンマスター」なんだからダンジョンを造ってナンボのモノだしね。


なんて考えたら、開いていたページの文字がフヨフヨと変化し始めた。

さすがは女神様からもらった「しおり」だ。普通の小冊子じゃないな。


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この世界には「レベル」や「パラメータ」等のステータスはありません。

ですから、「職種」のパラメータもありません。

この世界は個人に対する職業選択の自由があり、自分自身で職業を決められます。


なお、「ダンジョンマスター」という職種は存在しません。

それにより「ダンジョン」自体も存在しません。

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はぁ?!いやいや、あるって!しっかりとステータスに「ダンジョンマスター」って書いてあるって!

どういうこと?さっきから「しおり」に書いてある事と現実に目の前で起こってることに大きな違いがありませんか?

どっちが正解なの?不安だわぁ~。


いろいろと問題はあるが、とりあえずほっておくとして現在地の確認もしないといけない。こんな場所でボーっとしててもしようがないのだ。村でも町でも人のいる場所に行って情報収集しなと、何も始まらない。


すると、また「しおり」の文字がフヨフヨと変化した。


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*街に行こう!!


あなたは現在、「モール」という大きな街のそばに転移しています。

目の前の街道はモールの街に続いてます。方向は右(北)に向かいましょう。

街に入る時に「入街税」が必要になりますが、ご安心ください。

足元の袋に500ギル(あなたの金銭感覚で5万円程度)と護身用のナイフ、3日分の携帯食料が入っています。

それと、文字や言葉に関しても転移者特権で理解できるようになっています。


さぁ!!冒険の始まりです!

頑張ってモールの街に向かいましょう!

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……足元には袋があった。中には大きめのナイフ、ビスケットみたいな携帯食料、あと銀貨が4枚と銅貨が9枚、鉄の硬貨が10枚が入っていた。

それは良い。それは良いんだが「街道」が無い!


あるのは穏やかな海と白い砂浜、それと森だけ……。


おい!!女神!!ここ、どこだよ?!!

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