第29話~大和の歓迎会~
レストランに着くと、メンバー達は誰からともなく、談笑しながらテーブルと椅子の位置を動かしはじめた。
繋げられたテーブルに、遥が何処からか持ってきた白い布を、クロス代わりにぱっとひろげかけると、一気に空間は、パーティーの空気に変化を遂げた。
「ねぇ大和。今日は仕舞った食器を並べてもいいんじゃないかしら?もう、あなたが追加してくれた温度項目で大丈夫なはずよ?」
沙羅から、先日の食器やカトラリーを使う提案をされた大和は、わかったと奥へ引っ込むと、仕舞い込んでいたそれらを出してきて、テーブル上へ並べはじめた。
「うわぁ、何だかワクワクしますね!僕手伝います!」
李留は楽しそうに、そう言って手伝いはじめた。
「座ると食事体験がはじまる、みんなそれぞれショーケースに浮かぶ料理皿を見て注文してきて?但し、ベイは頼まなくていい」
「なんでだよ!大和!意地悪言うなよ!」
ベイは納得いかないとばかりにふくれた。
「ベイの注文はもう俺がフルコースでしておいた。どうせお前の事だから全部注文するんだろ?温度はあつめが好きなのも全部わかってるよ」
「え!?本当!?」
ベイは歓喜の声をあげると、早速嬉々として着席した。
すると目の前の食器に、美味しそうな湯気をくゆらした料理たちが現れ始めた。
「うわぁ……美味しそう!早く!早くみんなも注文して座ろうぜ!」
ベイが、待ちきれないとばかりにそう言う姿をみて、ワッカは可笑しそうに笑った。
「じゃあ皆さん、食いしん坊がさらに煩くなる前に、急ぎましょうか」
メンバー達は、各々の注文を急ぎながら済ませると
早速、各々の席に着席をした。
◇
月に来てから、こんな和やかな空気がステーション内に流れるのは思えば初めての事だった。
「じゃあ今日は大和の歓迎会と言う事で、楽しみましょう?みんなシャンパンのグラスを持ったかしら?グラスは本物だから、くれぐれも扱いには気をつけてちょうだいね」
遥がそう音頭を取ると、みんなグラスを手にした。
「じゃあ大和の【2%】加入に乾杯!」
遥がそうグラスを掲げたあと、皆は各々にグラスを合わせ、パーティー開始の音色を鳴らした。
「じゃあ大和にまずは自己紹介をお願いしませんか?僕達は機関の歓迎会でし終えてますし、大和はその能力で既にみんなの事は把握済みでしょうから」
そうワッカはシャンパンを味わいながら、大和に振った。
「うん!聞きたい!!大和は人の事を読んでばかりで、自分の話は一切しないんだもの!」
真琴は興味津々に、体勢を前のめりにして大和に詰め寄った。
それを無表情で聞いていた大和は、シャンパンを飲み干すと、【2%】メンバーをぐるりと見渡した。
「普通に話をしても面白くないな、じゃあ……みんなで能力対決しない?」
大和の突然の提案に、皆が驚きの表情で固まった。
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