第28話~オフ~



 太陽ガスの回収作業も順調に進み、各々の担当任務、何よりもステーションでの生活にも慣れてきた【2%】の面々は、その日、久しぶりの全員1日オフの通達に喜び沸いていた。


「今日の食事のカプセルを受け取ったら、すぐ自由にしてもらってかまわないわ」


 そう言って、メインルームに揃ったメンバーに、遥がひとりずつカプセルを手渡し始めた。


「遥さんとワッカさん、少し太陽談義しませんか?僕、皆さんのお話をもっと聞きたいです!」


 李留が目をキラキラさせながら笑顔で誘うと、遥とワッカは快く同意し、ルームの端にある椅子に座ると談笑をはじめた。


「さて……沙羅と真琴は、このオフをどうするの?」


 暖が並んで立つふたりに尋ねると、ふたりの間をベイが割って入ってきた。


「俺は勿論、今からレストランに入り浸る!沙羅一緒に行かない?沙羅のカフェのメニューのお薦めとか聞きたいからさ」


 李留に負けないぐらい目をキラキラさせるベイに、沙羅は圧倒されながら笑顔を向けた。


「じゃあ……みんなで行きましょう?」


「お姉ちゃんのカフェの珈琲、私も飲みたい!行こう行こう!」


 真琴は飛び跳ねながら、賛同した。


「思えば、大和の歓迎会がまだだったよね?折角だし、全員で今からレストランでパーティーをしない?その方がさらに親睦が深まると思うんだ」


 暖の提案に、少し戸惑う顔をした大和は、「いいよ、歓迎会なんて……」と、素っ気ない返事をした。


「ダメよ!機関では私達もしてもらったの。今度は私達がそれをする番、ね?真琴」


「うん、あの時の料理も美味しかったよね!お姉ちゃん!」


 盛り上がる双子姉妹を横目に、表情を変えず大和は少し考えこんだ。


「機関のどのレストランかわかる?レシピがないから完璧には無理だけど、ある程度なら再現出来るかもしれない」


 それを聞いた沙羅が「でもそんなの、パーティーに間に合わないじゃない」と問うと、大和は一言、「俺を誰だと思ってるの?」と、立ち上がり、何やら作業をはじめた。


 真琴がその姿に「私も手伝うわ大和!」と、嬉しそうに駆け寄ると一緒に作業をはじめた。


「すっかり、懐いちゃって……」


 沙羅はそんなふたりの姿に、少し寂しげな表情を浮かべた。


「寂しい?」


「そうね、少し寂しいかなぁ……」


 暖の問いかけに、沙羅は少しわざとふてくされた様に微笑んだ。


「それって……どっちに……」


「え?暖、何?よく聞こえなかった……」


 金色の髪を耳にかける仕草をしながら、沙羅は聞き直した。


 暖はそのウェーブのかかる髪から目を反らせると


「いや……いいんだ……」


 と、視線を床に落とした。



「大和!早くしろよ!俺は上手いものを食べたいんだよー!!」


 待ちきれなくなったベイが駄々っ子の様に絶叫すると、大和が呆れた顔で振り返りつつも、自ら行く準備をはじめた。


「じゃあ、せいぜい俺をもてなしてよ?元【サイエンス】の同僚ベイさん?」


「お、おう……っていうか、さっきのあれは?機関のレストランメニューは?」


「だから、俺を誰だと……」


「え!?本当にもう出来たの?お前最高だな!!さぁみんな!今日は大和の歓迎会だ!みんなでレストランに行こう!」


 あまりに喜ぶベイに釣られて、気づけばみんなが笑っていた。


 其々に笑顔で顔を見合わせると、レストランへと歩きだした。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る