第21話~太陽~
ステーションに戻った探査機メンバーの4人が、色々な後処理を終え、大きな窓のあるメインルームに戻ってくると、まず遥が食事のカプセルをひとつずつ手渡した。
「お疲れ様。とりあえずすぐこれを摂取して。あとは、自室に戻って、順番に沙羅のケアを受けてちょうだい。沙羅あとは頼んだわ」
沙羅はコクリと頷くと、「じゃあ李留君から。」と、李留に声をかけた。
「じゃあ俺達は、沙羅が来るまで自分達の部屋で待ってたらいいんだね?さすがに疲れたから、眠っていたら起こしてよ沙羅」
いつも元気なベイも、さすがに疲れたのか声に覇気が無かった。
「太陽の解離ガスの回収は成功。これから毎日この任務は続く。だんだん慣れるとは思うけど、無理そうならまた報告して?あとベイ、何か気づいた事はなかった?」
大和が作業の手を止めて振り返ると、そう尋ねた。
「わざわざ探査機で往復しなくても、回収システムを太陽周辺に構築したらもっと簡略化出来そうな気がしたかな。この距離なら、俺のテレポートも可能な気がしたし。」
「つまり、ベイが最初の取っ掛かりでテレポートで太陽近辺にシステムを構築すれば?効率的になるって事か。それは全然ありだな、考えてみるよ」
そんな大和とベイのやり取りを見ていた李留が、突然意を決したかの様に、両手を固く握りしめながら「あ、あの!」と、叫んだ。
「何?太陽にも何か生命体がいたの?」
ただならぬ李留の様子に、遥が心配そうに声をかけた。
「た、太陽って、星なんですよね?」
あまりな問いに、ルームに数秒の沈黙が流れた。
「太陽は恒星、兄弟星もこの宇宙にはいくつかあるわけだし、っていうか、星以外に一体何があるわけ?さぁ、沙羅を待たせたら悪い、行こう李留君」
暖が微笑みながら、李留を促した。
すると、今度はワッカが、思い詰めた顔で口を開いた。
「いや、李留君が言いたい事、僕にもわかります。黙っておこうかと思ったんですが、それがわかった所で、特に何も変化があるわけではないわけですし……」
「いいよ、大丈夫だから言ってみて?」
大和が、ワッカのただならぬ様子に何かを察したのか立ち上がると、つかつかと近づき、ワッカと対面する様に立ちはだかった。
ワッカもそんな大和を真っ直ぐと見つめた。
「大和さん、僕の能力は人を視た時に、その頭上に能力の数値が浮かび上がって視える事です」
「あぁ、知ってる」
「機関の中でも【2%】の皆さんの数値はずばぬけていました。だから今母星を離れ、このメンバーで月にいるのだと思っています。」
「前置きは大丈夫だから、口に出してかまわないよ?」
「はい………僕、み、視えたんです。」
「いいから続けて?」
「太陽の頭上って言い方はおかしいですけど、はっきり値が浮かんでいました。だから、李留君も僕と同じ想いを感じたのかなって……」
ルーム内に、言葉に出来ない重苦しい空気が張りつめた。太陽は確かに、見た目からして他の星とは違うのは確かだ。ただ、星以外のワードの選択肢がそもそもないのも事実だ。
「地球は?月は?じゃあ、他の星たちも値が視えるんじゃないの?今まで宇宙に出た事なかったんだからさ、知らなかっただけで、星のパワーを数値化できるのは、全然ある話だと思う。あまり思い詰めない方がいいと思うな……」
暖が、考えられる色々を語るも、ワッカの顔色は更に青ざめていった。
「いや、違うんです……そうじゃないんです……」
「思い詰めない方がいいって部分は、俺も暖と同意見。ワッカは今の想いは全部、みんなの前で口に出した方がいい。で?太陽の数値はいくらだったの?」
大和は淡々としながら、ワッカを真っ直ぐ見つめた。
ワッカは大きく深呼吸すると、自分で自分の言葉を確認するかの様に、ポツリとこぼした。
「太陽の値は…………∞(無限大)でした」
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