第12話~贈り物を選びに~


双子姉妹が【2%】に所属して数日が経過した。


仲間達とはプライベートの時間も共にして、どんどん打ち解けていった。


父親も新薬のお陰で、退院出来る事になったらしい。

報告のメッセージを受信して、すぐにでも駆けつけたい衝動に駆られた姉妹だったが、宇宙プロジェクトの準備に入った事もあり断念した。


「やっぱり機関は甘くなかったか」


少しがっかりしながら真琴が呟いた。


「仕方ないわ。今は機関の任務をこなす事が最優先。とりあえずパパの退院祝いを隙間時間に明日買いにいきましょう」


「そうね。暖にお願いしてどこかお店を紹介してもらわなくちゃ。」


真琴はそう言うと、ベッドに寝転がったかと思うと、すやすやと寝息をたて始めた。


「今日の訓練はハードだったもんね、おやすみ真琴」


沙羅は、真琴に毛布をかけると灯りを消して、自分も眠りについた。







次の日、暖が迎えにきてもらい父親の退院祝いを買いに行く事にした双子姉妹は、久しぶりのショッピングにウキウキしていた。


「訓練の時間まで少ししかないから、早くするんだよ」


暖に釘を刺されつつ、沙羅と真琴はわくわくしながら店内をまわった。


機関の店は、アンドロイドのロボットによる接客以外は元の世界とほぼ同じだった。


「機関って徹底してるよね。能力者以外の人手は全てロボットなんだもん」


真琴が色々店内を見て回りながら、沙羅に話しかけた。


「逆に安心感があるわ。ここには犯罪はないもの」


「確かに。能力者同士で争う事もないもんね、あ、でもお姉ちゃんと暖の夫婦喧嘩は勃発するんじゃない?機関初!?どうなる機関の双子姉の運命は!」


「真琴茶化すなら、暖と座って待ってなさい。あなたどうせ飽きてきたんでしょう?」


ばれたかという様な仕草をして、真琴は暖が座っている客用のソファに駆け寄ると隣に座った。


「お姉様に怒られちゃった、暖もこれからの人生大変ね」


暖はそれを聞いておかしそうに笑いをこらえた。


「双子なのに性格が全く違うから面白いよね。真琴はとりあえずお姉様に贈り物選びは任せて、俺とお話しして待ってようよ、ね?」


暖は大きな右手のひらで、真琴の頭を包み込む様にポンポンと2回軽く触れた。


真琴はそれをくすぐったそうに受け入れた後、ずっと疑問だった事を暖に尋ねる事にした。


「ねぇ暖、【2%】で今度月任務に行くでしょう?月に生命体はいないの?太陽は熱そうだからいないと勝手に思ってるけど」


「月に生命体はいないと思うよ。MOONステーション建設計画からかなり経過してるけど、聞いた事はないかな、でもだから今回【2%】が派遣されるとは思ってる」


「そっか、遥も李留君も私達とは違う視る力の持ち主だもんね。妖精だらけだったりして!?」


「はははは、それはあながちある話かもしれないね。あと、今回携わるのは禁止されてる地球。ここは生命体がいる星だよ」


「生命体がいるの!?学校では習わなかったのに!」


「ここは面白い星でね、色々なタイプの生命体がいるんだけど、その中でも日本って地域が俺達母星の文明とそっくりなんだ」


「何それ。母星には双子がいたの?」


「そう、いわば双子文明かな。万が一、月で何かトラブルが起きて母星に帰れなくなったら、日本に降り立つしかないね、溶け込めるはずだよ。」


「うわぁ行ってみたい!!日本って場所に!」


真琴が興奮気味に声を発していると、沙羅がプレゼントの紙袋を手に此方へやってきた。


「お持たせ、パパのプレゼント買ってきたわ。暖、もう訓練の時間かしら?」


「そうだね急ごうか、おじさん喜んでくれるといいね」


沙羅はこくりとうなずくと、3人は店を後にし歩きだした。






「月に向かう日程が決まったわ」



リーダーの遥は前に立って、【2%】のメンバーへ説明を始めた。


ルームにはソファとテーブルがいくつかランダムに置かれ、メンバーは各々好きな場所に座りながら、遥の話に耳を傾けていた。



「急で悪いけど、月への出発は3日後になったわ」



途端に、ルーム内がざわついた。



「思っていたより早いですね。何か緊急な事でも起きましたか?」


ワッカが質問を投げ掛けた。


「小康状態だった星間戦争が近日中に再燃しそうなの。だから星は早急に太陽のガスを欲しがってる」


「戦争が再燃………」


ルーム内が一気に張り詰めた空気で満たされた。

そんな中で星を離れて、大丈夫なのか。

それに3日後なんて早すぎる。


皆が同じ気持ちで沈黙を続けていると、遥が説明を進めた。


「この3日間は、完全オフよ。家族に会いたい人は会ってくるといいわ。荷造りは今から支給するケースに入る分のみにしてちょうだい。連絡は以上よ。」



遥はそう言って、銀色のメタル色のケースを人数分並べ始めた。よく見ると、取っ手の部分に皆の名前のイニシャルが刻みこまれていた。


沙羅は立ち上がり、Sと刻まれたケースを手に取った。


「真琴早く荷造りを済ませて、パパに会いにいきましょう。そして、貴方は鞍馬に会ってきた方がいい。」


真琴は少し泣きそうになりながら頷くと、Mと刻まれたケースを手に取った。




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