第10話~歓迎会~
沙羅と真琴はお揃いのワンピースに身を包み、暖から渡された住所と地図が書かれたメモを見ながら、歓迎会の店を探していた。
「えっと、728番地だから……ここじゃない?」
沙羅がメモとその店を交互に見ながら、真琴に言った。
「うん、そうみたい。じゃあ入ろうよお姉ちゃん。」
沙羅と真琴はその店の真っ白い分厚い扉を、ゆっくりと開くと、その扉は来客を知らせる鈴の音色を奏でた。
店内は全てガラスばりで、外には庭があるのか樹木と沢山の花が咲き誇り、天然の鮮やかな自然の壁を構築していた。
そして中央には長テーブルが白いクロスを纏(まと)い、存在感を示していた。
テーブルには椅子が7つあり、既に5人が着席していて、その中には暖と李留もいた。
「待ってたよ。迷子にはならなかった?」
暖が立ち上がり、沙羅と真琴の傍にやってきた。
「うん、メモのお陰で大丈夫だったわ。有り難う」
沙羅がそう答えると、暖はみんなの方を向いて紹介をはじめた。
「みんな、こちらが沙羅、こちらが真琴。双子の姉妹なんだ。宜しく頼むよ。とりあえず椅子に座って、まずは乾杯をしよう。」
沙羅と真琴は椅子に座ると、一番最初に機関の道案内をしてくれたあの白色のロボットがやってきて、グラスに飲み物を注いだ。
機関の街で働いてるのはロボットなのね
沙羅は自分達が今まで生きていた世界と似てはいても、やはり違うのだと、改めて感じていた。
「じゃあみんなグラスは持った?【2%】の新人さん達との出会いに乾杯!」
ベイが乾杯の音頭を取ると、皆、乾杯!と笑顔てグラスを重ねた。
「よし今日は沢山食べよう。食べながらそれぞれ自己紹介宜しくね。」
ベイは早速、目の前の沢山の料理を食べはじめた。
「そんなベイがまず自己紹介しないんですか?仕方ありませんね、じゃあ僕から。沙羅さんはお久しぶりですが、李留君と真琴さんははじめましてですね。ワッカと言います。能力を数字で読み取る事が得意です。以後、宜しくお願いしますね。」
「ついでに俺の紹介もしててよ、ワッカ。」
ベイは、フォークで綺麗な焼き色のついた肉の塊を頬張りながらワッカに自分の説明を頼んだ。
ワッカはその姿に笑いそうになりながら、仕方ないという感じに紹介をはじめた。
「では、紹介をさせて頂きましょうか。こちらの食いしん坊がベイ。少しがさつですが、気のいいやつです。得意はテレポート。移動の際はベイのご利用をお待ちしております。」
ワッカがおどけながら紹介を終えると、みんなが笑い、和やかな空気がその場を包みこんだ。
「じゃあ、次は僕が。はじめまして、李留と言います。暖さん沙羅さん真琴さんとは以前からの知り合いです。あとは……妖精と話せます!宜しくお願いします!」
李留は椅子から立ち上がると深々とお辞儀をした。
「あなた、妖精と話せるの?奇遇ね、私も色々異なる種族と会話が出来るの。いわば、歩く翻訳機。」
そう言って、テーブルの端に座っていた黒髪でショートカットのボーイッシュな女性が立ち上がった。
「みんな何だかそれぞれに面識あるみたいね。はじめまして、私は遥(はるか)。【2%】のリーダーをやってるわ、宜しくね皆さん。女性の仲間が増えて嬉しい。」
遥はそう言って、沙羅と真琴に微笑みかけた。
「じゃあ一応俺も自己紹介しておこうかな。俺は暖。真琴と沙羅とは幼馴染み。得意はこれといったものは特にないかな。わりと平均的にオールマイティ、みんなみたいに特化してない平凡さが逆に得意部分なのかもしれない。」
「確か、沙羅が暖の婚約者なんだっけ?」
遥が、スープを口にしながら尋ねた。
暖は突然の質問に、少し真顔になってこう答えた。
「お互いの親が勝手に決めた事だよ。メンバー内で働いている時は特別扱いしないで欲しい。沙羅だってそんな目で最初から見られるとやりにくいはずだし。」
沙羅は暖の意図を色々な角度から受けとりながら、私も同じ気持ちだという事を仲間に伝えた。
「わかったわ。元々特別扱いするつもりはなかったし、やりにくい様にはしないから安心してちょうだい。で、沙羅と真琴の得意な能力は何なの?」
遥が興味がある風に、ふたりに尋ねた。
それを受け、まずは沙羅が答えはじめた。
「私は、昔から人の自然治癒力を高める事が出来ます。勿論、精度は一定していなくて出来ない事も多々あるんですけど、これからは更に高めていけたらと思っています。じゃあ、次は真琴の番ね。」
「私は……。」
沙羅からバトンを受けて、真琴は返事に困った。
「私は特に語れる様なものはないかもしれません。お姉ちゃんみたいにヒーリングも出来なくはないけど、お姉ちゃんより全然駄目だし。。」
「ま、真琴さんは!花束を作る名人なんですよ!」
李留がいきなり唐突に叫んだ。
「李留君、嬉しいけどそれフォローになってないよ。」
真琴が赤面しながら、あわてふためきつつ李留にそう告げると、ワッカが真琴の頭上を凝視し始めた。
「真琴さんと沙羅さんはさすが双子ですね。数値は互角。だからそんなに卑下しなくて大丈夫ですよ。」
真琴は言われた意味がわからなかったが
みんながその言葉に頷く姿をみて、それ以上は
何も言えなくなってしまった。
「とりあえず!今からこの仲間で仲良くやっていこうぜ!さぁみんな食べようよ。食べないなら、俺が全部頂いちゃうよ?」
ベイが両手にフォークを持ち、口にもたらふく食べ物を頬張りながら、そうみんなに語りかける姿は、その場に笑顔をもたらした。
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