第9話~機関への引越し~



「【2%】に!?3人共??」


暖は、興奮して歓喜の声をあげた。


沙羅はそれを聞いて、先日会ったワッカとベイの事を思い出していた。

あのふたりは、本当に凄い能力者だった。

そんな人達がいる所に所属なんてして、果たしてやっていけるのだろうか。

喜ぶ暖とは裏腹に、沙羅には不安な気持ちがひろがっていった。



「【2%】って部署があるんですか?」



李留が、よくわからないという感じで暖に尋ねた。



「真琴と李留君には言えてなかったね。俺もそこに所属してるんだ。また仲間も紹介するよ。とりあえず、今日は疲れただろう?もう家に帰って大丈夫だからね。」


「そうなんだ。暖と同じ所で働くなら、安心だねお姉ちゃん。」


「えぇ、そうね。」


暖と所属が同じと聞いて喜ぶ真琴に、沙羅は静かに微笑んだ。


「僕も皆さんと同じと聞いて安心しました。オーナーに早く報告しないと。暖さん、今日は色々と本当に有り難うございました。」


李留は暖に深々とお辞儀をすると、部屋を出ていこうとした。



「待って李留君!私とお姉ちゃんも一緒に帰るわ。暖、今日は本当に有り難う。」



そして3人は暖に別れを告げると、モノレールの発着場へと向かった。







「今日からここに住むのね。」


沙羅と真琴は、機関の街の中にあるルームの一室を与えられ、そこに住む事になった。


父親には機関に合格した事を伝えると、少し寂しそうにしながらも祝福してくれた。


沙羅と真琴の契約金で始まった新薬治療はとても順調で、父親の経過はとても良かった。

住居は機関に移る事になり、毎日お見舞いで顔を見せる事は不可能になったものの、時間があれば自由に行く事は許されていて、想像していたよりも特に不便さはなかった。


「機関の待遇がここまでいいと、今から始まる任務や訓練がきついのかもって、正直怖くなっちゃうわよね。ところで、花屋は大丈夫だったの?真琴も李留君も辞めてしまったわけだし。」


沙羅は、荷ほどきをしながら真琴に尋ねた。


「オーナーが既に新しい人を雇ってくれていて心配なかったわ。鞍馬はぬかりの無い男なの。」


「それはごちそうさまでした。」


沙羅はおどけた様に言うと、立ち上がり部屋の窓を開けた。


「普通の街にしか見えないのに、街の人は皆、能力者なんだよね。なんだか不思議だな。」



沙羅は窓の外にひろがる世界を見つめながら、未だに機関という空間を掴みかねていた。



「お姉ちゃんサボらないでよ!あと少ししたら【2%】の歓迎会に行かないといけないんだから、早く片付けて着替えないと間に合わないわよ!」



「あぁ本当にもうこんな時間ね。急がなくちゃ。」



沙羅は急いで作業に戻った。



そして沙羅と真琴は、引っ越し作業に集中しながら、この後に予定している歓迎会に心踊らせていた。

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