第9話~機関への引越し~
「【2%】に!?3人共??」
暖は、興奮して歓喜の声をあげた。
沙羅はそれを聞いて、先日会ったワッカとベイの事を思い出していた。
あのふたりは、本当に凄い能力者だった。
そんな人達がいる所に所属なんてして、果たしてやっていけるのだろうか。
喜ぶ暖とは裏腹に、沙羅には不安な気持ちがひろがっていった。
「【2%】って部署があるんですか?」
李留が、よくわからないという感じで暖に尋ねた。
「真琴と李留君には言えてなかったね。俺もそこに所属してるんだ。また仲間も紹介するよ。とりあえず、今日は疲れただろう?もう家に帰って大丈夫だからね。」
「そうなんだ。暖と同じ所で働くなら、安心だねお姉ちゃん。」
「えぇ、そうね。」
暖と所属が同じと聞いて喜ぶ真琴に、沙羅は静かに微笑んだ。
「僕も皆さんと同じと聞いて安心しました。オーナーに早く報告しないと。暖さん、今日は色々と本当に有り難うございました。」
李留は暖に深々とお辞儀をすると、部屋を出ていこうとした。
「待って李留君!私とお姉ちゃんも一緒に帰るわ。暖、今日は本当に有り難う。」
そして3人は暖に別れを告げると、モノレールの発着場へと向かった。
◇
「今日からここに住むのね。」
沙羅と真琴は、機関の街の中にあるルームの一室を与えられ、そこに住む事になった。
父親には機関に合格した事を伝えると、少し寂しそうにしながらも祝福してくれた。
沙羅と真琴の契約金で始まった新薬治療はとても順調で、父親の経過はとても良かった。
住居は機関に移る事になり、毎日お見舞いで顔を見せる事は不可能になったものの、時間があれば自由に行く事は許されていて、想像していたよりも特に不便さはなかった。
「機関の待遇がここまでいいと、今から始まる任務や訓練がきついのかもって、正直怖くなっちゃうわよね。ところで、花屋は大丈夫だったの?真琴も李留君も辞めてしまったわけだし。」
沙羅は、荷ほどきをしながら真琴に尋ねた。
「オーナーが既に新しい人を雇ってくれていて心配なかったわ。鞍馬はぬかりの無い男なの。」
「それはごちそうさまでした。」
沙羅はおどけた様に言うと、立ち上がり部屋の窓を開けた。
「普通の街にしか見えないのに、街の人は皆、能力者なんだよね。なんだか不思議だな。」
沙羅は窓の外にひろがる世界を見つめながら、未だに機関という空間を掴みかねていた。
「お姉ちゃんサボらないでよ!あと少ししたら【2%】の歓迎会に行かないといけないんだから、早く片付けて着替えないと間に合わないわよ!」
「あぁ本当にもうこんな時間ね。急がなくちゃ。」
沙羅は急いで作業に戻った。
そして沙羅と真琴は、引っ越し作業に集中しながら、この後に予定している歓迎会に心踊らせていた。
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