第8話~能力検査~
「妖精って、おとぎ話の中の偶像でしょ?」
沙羅と真琴は、李留を挟む様に長椅子に腰かけると質問を投げ掛けた。
「えぇ、でもまさにそんな感じの存在は本当にいて、色々教えてくれたりするんですよ。」
「そうなんだ……なんだか羨ましいな。私も会ってみたい。ところで妖精さんは今はいないの?」
沙羅は、周囲を見渡す仕草をしながら李留に尋ねた。
「機関には不思議なぐらい沢山いますね。僕も実は驚いたんですけど、能力者に引き寄せられるのか、この特殊な空間にもしかしたら引き寄せられるのかもしれません。
沙羅さんの左肩にも実は今、座ってる子がいますよ♪」
「え?そうなの??」
沙羅は驚きながら自分の左肩を見ると、自分には見えないその存在に軽く会釈をした。
すると検査室の扉が開き、中から暖が出てきた。
「待たせたね。じゃあ、3人とも部屋に入って。」
沙羅と真琴と李留の3人は、緊張した面持ちで立ち上がると検査室へと入っていった。
◇
真っ白な天井、真っ白な壁、真っ白な床。
その部屋には、一切家具らしき物もなく、そして誰もいなかった。
「ここも待機室か何かなの?」
沙羅が不思議そうに暖に尋ねると、暖は首を横に振った。
「もう検査は始まっているよ。そのまま普通にしていて欲しい、すぐに終わるから。」
「え?私達何もされてない。どういう事?」
真琴が、戸惑いながらその真っ白な空間を見渡した。
「あはは。だから、真琴の嫌いな注射はないって言ったろ?そろそろスクリーニングが終わる。結果が楽しみだね。」
暖は、両手を祈る様に組みながら天井を見上げた。
沙羅と真琴と李留は、困惑しながらその時を待った。
『スクリーニング終了。李留合格。』
すると突然、機械的な音声が天井から降り注いだ。
李留は大きく息を吐いて、その場に立ち尽くした。
『スクリーニング終了。真琴合格。』
真琴は驚いた顔で沙羅の顔をみた。
沙羅は無言で真琴の顔を見つめ返した後、静かに目を瞑った。
『スクリーニング終了。沙羅合格。』
「よし!!!!」
暖が、安堵の表情を浮かべながら喜びの声をあげた。
「なんだか、正直ピンときませんね。でも、みんな合格したんだ。。うん、合格ですよ!おめでとうございます!沙羅さん真琴さん合格ですよ!」
李留は、自分に言い聞かせる様に反芻しながら喜びの声をあげた。
沙羅と真琴は混乱しながら、合格の言葉が
まるで他人事の様にしか感じられず、いつまでも呆然としていた。
そんな双子姉妹に、暖は近づいてこう言った。
「これで、おじさんの治療が出来るよ。」
その言葉を聞いた途端、緊張の糸が切れたかの様に沙羅が声を出して泣きはじめた。
「お姉ちゃん。。」
真琴はそんな沙羅を抱きしめると、自分もまるで子供の様に、声を出して泣いた。
すると、天井からまた声が降り注いできた。
『今から所属を伝える。』
皆、一斉に天井を見上げると固唾を飲んだ。
『3名とも、所属は【2%】、以上だ。』
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