第2話 異変

それはいつもと変らぬ夜のはずであった。嗅ぎ慣れない臭いに反応し目を覚ますラカム。


(なんだこの臭い、家の臭いじゃない。別の誰か………)


いつもなら真っ暗で静けさに包まれた下の階に灯りが灯っている。


恐る恐る階段を降りるラカム。


(父さんと母さん以外に誰かいる?2……いや3人)


灯りが灯る居間から聞こえる声。それはラカムにとっては汚い声であった。


そっと覗くラカム。


(!?どっどういうことだ)


目の前の光景に動揺するラカム。父は額に穴を開け椅子にもたれ掛かり、母は身包みを剥がされ生まれた時の姿で見知らぬ男と密着していた。


(とっ父さん?母さん?なにしてるんだ)


母と目が合うラカム。必死に目で訴える母をラカムは理解出来なかった。


「なに、なにしてんだテメェら!!」


「!?」


「なっ」


「ガキだと」


「ダメ!ラカム来ちゃダメ!!」


力強く拳を握りしめ母と密着していた男を殴り飛ばす。


「ぐはぁ!なんだこのガキ。………いっ痛てー」


「なっこのガキ、ウォリアー3を一撃で殴り飛ばした!?」


残りの2人が銃を構える。


パーン!パーン!!


室内に鳴り響く銃声。


「母………さん?」


2発の銃弾はラカムに覆い被さった母の背中に着弾した。


「なにしてるの母さん、母さん!」


「ラカム………貴方は………生きて、どうか強く幸せに…………」


母の顔はラカムの顔の横に気が抜けたように倒れた。


「母さん………あっウワァー!!」


「ったく、だからさっさと任務をこなして引き上げるべきだったのに、余計なことをするから」


「でもよ、ウォリアー1。任務の対象ってこの『ルガール家』の殲滅だろ?だったら撃ち洩らしして上から責められる手間が省けてよかったじゃないか?大丈夫かウォリアー3」


「アッカッ………」


「なんだよウォリアー3………ってお前殴られた頬骨折れてるぞ!」


「!?」


「なんだと?このガキの一撃で?」


「おい、これはマジで上は正しかったってことか?正直この任務なんで必要なのか疑問だったが、こんな化物じみた子ども聞いてないぞ!」


「コッイッツハオレガヤル」


「おいウォリアー3!」


「オレノオタノシミノジャマシヤガッテ」


冷たくなった母をモノのように退かす男。


「テメェヨクモヤッテクレタナ」


優にラカムを持ち上げる男。


(なんだよ、なんなんだよ、父さんと母さんがお前達に何をしたっていうんだよ。ふざけるな…………ふざけるな!!)


ドックン、ドックン。


高鳴る鼓動何かが弾ける感覚。その身を委ねると


グシャ………


不気味な音が突如響く。


「なっなっなにしてんだこのガキ!!」


顔の上半分が男達の前に飛び落ちる。


「ウォーリアー3………うっウェ〜」


「くっ」


すかさず発砲し続ける男の1人、しかし弾丸はラカムの華麗な身のこなしで掠りもしなかった。


(なっ早い!)


咄嗟に防御姿勢をとる男の1人。ラカムの拳は男を殴り飛ばし壁に打ち付けた。


(なんなんだこのガキ………)


「ウォリアー1!クソなんだこのガキ!来るな………来るな!!」


「よくも、よくも父さんと母さんを………お前達にお前達になにをしたって言うんだよーーー」


容赦無く乱射される弾をゆうに躱すラカム。


「この距離で躱すだ………なんだなんなんだこの化物」


撃ち尽くした拳銃からは虚しい空砲の音が漏れる。


「このヤロー!!!」


「やめろ、やめろバケモ…………」


ラカムの拳は男の胸部を貫いた。


「ハァハァハァ」


遠くからサイレンの音を耳にする。


(血塗れの俺………この姿で俺は無実を証明出来るのか?)



ただ闇雲に訴えても相手は納得しません。感情に左右されない理性、幅広く深い知性、そしてその者から滲み出る感性。その3点が一つになった言葉に、初めて人は感化され影響されるのです




(母さん………ゴメン。父さん………ゴメン。俺は行くよ。2人を置いて行くことを許してくれるよね?)




「ここは………」


男はベットの上で目を覚ました。


「起きたかね。全く地元警察の世話になりよって。表沙汰に出来ない件でやらかしてくれたな」


男の前にはハットをコートを身に纏った男が彼の目覚めを待っていた。

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