星宿の卵売り
「ごめんください。今月分をお持ちしました」
時折研究所には卵売りの男がやってくる。白いローブを纏い、柔らかくウェーブのかかった淡い翡翠色の髪は歩く度にふわふわと揺れる。売るのはただの白い卵ではない。表面が星空のような卵だ。一体そんな卵をどんな鳥が産むのかと聞いたが、卵売りは「星雲の向こう側に生息する
「……一等星に二等星?」
「卵の名だ」
「いちいち名を付けているのか」
なんともマメだな、と言えば所長は少しだけ不思議そうに首を傾げ、深い靑色の瞳を何度か瞬かせる。
「名が無ければ孵化するまでの呼び名に困るだろう」
孵化するまで。
孵化した後ではなく、するまで。
疑問を問いかけるも所長は「何時かわかる」というばかりで答えなかった。
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