小さな小さなお嬢さん
久しぶりに研究所を訪れたら靑所長に開口一番「忙しい。好きにしろ」とだけ言われて放置されてしまった。普段よりも何処か刺々しい口調から苛立ちが滲み出ている。仕方がないので勝手に食堂の奥を借りてコーヒーを淹れる事にした。フィルターにゆっくりとお湯を落としていた時、視界の端にふと動く何かが目に入った。
「何をしていらっしゃるの?」
そこには手のひらに乗る位小さな少女がいた。ドリッパーからコーヒーの雫が落ちる様を不思議そうに見つめてから私を見上げる。柔らかそうな長い乳白色の髪の合間からエメラルドに似た瞳が覗く。汚れ1つない純白のドレスを纏った姿は雪の妖精を想起させた。所長が忙しそうだから、自分でコーヒーを淹れているんだと答えたら「まぁ」と小さく言いながら口元に手を当てて笑った。
「先生、ここ最近ずっと星のお祭りの事でばたばたしてるの。昨日うっかり宙の靑と深海の星を混ぜてしまって、少しだけ機嫌が悪いみたい」
成程、仏頂面が更に酷くなったと思ったらそういう事だったのか。靑所長は全てを計算して淡々と行っている様に見える男だが、割とおっちょこちょいな面がある。納得して淹れ終わったコーヒーをサーバーからカップへ注いだ。ついでに小さな小さなお嬢さんに一緒に飲むかと聞けば「私はコーヒーより紅茶の方が好きよ」と言われてしまったので、紅茶も淹れる事にした。
余ったコーヒーはあの多忙な所長に持って行ってやろう。
所で君の名前は?と問いかければ、移動手段として使っているらしい黒猫の背中に乗った彼女はにこりと笑って答えた。
「私は
さて、私はあれの友人枠で良いものか。無粋だったので否定はせず肯定の返事だけ返しておいた。
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