第47話 少し横道

 少しばかり予想外の告白……告白? まあ、それっぽいものが飛び出てきたが。


「──お待たせ致しました」


 ちょうど良いタイミングで注文してたメニューが運ばれてきたため、これ幸いとばかりに一息入れる方向に話を持っていくことに。

 いや本当にナイスタイミングだった。適当にあしらってはいたとは言え、内心では軽く情報を整理する時間が欲しかったのだ。

 てことで、近藤さんはホットココアとデラックスチョコバナナパフェを。俺はコーヒーとメイプルシロップパンケーキを暫し啄くことに。


「んー、待ってました! パフェとかわりと久しぶりだわー」

「テンション高いね? やっぱり女の子は甘い物が好きなんだねぇ」

「まあ、そこは人によるとは思いますけど。私は大好物ですね!」

「そんな気はしてた」


 サラッとマリンスノーの人気メニューを所望してたぐらいだし。あのケーキ、わりとしっかり手間掛かってるからか、専門店のそれと遜色ないクオリティなんだよな。……その分いい値段するけど。


「てか、そういう水月さんもしっかり甘いの頼んでるじゃないっすか」

「俺も普通に好きな方だからねー。わりと子供舌だし」

「スイーツ男子っすね。可愛いじゃないっすか」

「釈然としないんだけど」


 スイーツ男子呼ばわりもそうだし、可愛い扱いも納得いかない。千秋さんにも似たようなこと言われたけど、子供舌云々でそういう評価になるのは不満である。


「まま、それはともかく。いやー、ウチの店の上品な味も良いですけど、こういうちゃちい甘さも悪くないですよねー」

「ある意味チープさが売りみたいなもんだしね」

「ただ高いっすけどねぇ……」


 ちなみに近藤さんのデラックスチョコバナナパフェは千円ぐらいする。俺のパンケーキは八百円ぐらいだったかな?

 どちらにせよ、中々なお値段ではある。少なくとも、チープさ云々が挙がるメニューの金額ではないだろう。


「うぅむ。ついノリで頼んじゃいましたけど、いくら奢りでもパフェ千円……。やっぱり申し訳ないような」

「千円ぐらいで気にしすぎでしょ」

「いや千円って結構ですよ!? 私の時給と大差ないですし!」

「あれマリンスノーってそんな時給……あー、そっか。高校生だもんね。千円ちょいだっけ?」

「そうなんですよ……! いや、これでも他より高いし、文句はないんですけどね!? それでも一時間分の労働がパフェに消えるってなると……」

「なるほどねー」

「え、軽っ。言うて水月さんだって、私と時給そこまで変わらないですよね……?」

「俺の時給は千五百円だね」

「高っ!? えっ、たっか!? 何でそんな差あるのズルくない!?」

「単純に勤続年数が長いってのもあるけど、業務の大半俺できるし。ホールもキッチンやって、発注やレジ締め、事務作業もやらされて、棚卸しの時はほぼ確で駆り出されてるんだから、そりゃ時給も高くなるよ。各種手当ても含まれてるけど」


 伊達に店長から準社員扱いされてないのである。わりと真面目に就職を勧められているし、事実社員となっても即戦力で動けるぐらいにはいろいろできる。

 そして、それだけ仕事を仕込まれれば、比例するように時給も上がるに決まっている。と言うか、上がらなければとっくに辞めてる。


「な、なるほど……。つまり水月さんは、私とは比べものにならないぐらい稼いでると」

「いや、流石にバイトだけで稼ぐのにも限度はあるけどね。大学もあるし、生活費も必要だし」

「そうなんですか?」

「そんなもんだよ。と言っても、最近はバイト以外でも収入あったりするから、余裕はあるんだけどね。少なくとも、近藤さんに奢るぐらいはわけない。だからそこは心配ご無用」

「他の収入? なんか別で働いてたり?」

「違う違う。最近趣味でイラストに手を出してみたんだけど、結構人気出てさ。それで試しに支援サイト? ってやつに登録して宣伝したら、なんか小遣いぐらいの金額が入ってきてね」

「えぇ……」


 いや本当、世の中にはもの好きっているんだなって思ったよ。まさかプロでもないイラストレーターモドキに、わざわざ支援しようって思う人種がいるんだから。


「イラストって言うと、タイムラインでよく流れてくるアニメの絵みたいな?」

「そうそう。まさにそんな感じ」

「なんか、ちょっと意外っすね。水月さんがイラストって。やっぱりアニメとか好きなんですか?」

「んー、まあ嫌いではないかなぁ。ただいわゆるオタクってレベルではない感じ? イラストに手を出したのも、成り行きで親戚からお古を貰ったからだし」

「あ、そんな軽いノリなんすね」

「うん。元々多趣味なタイプだから」


 と言っても、ほとんどが下手の横好きではあるが。あと多趣味とは言いつつ、比率的にはインドア系の内容が多かったりする。運動とかも別にできなくはないが。


「へー。それでもアレですね。趣味でお金稼げるってかなり凄いっすね。アカウントとか教えて貰っても?」

「流石にそれはなー」


 知り合い、それもバ先の同僚程度の関係性の子に教えるには、趣味垢はちとハードルが高い。……友人でも普通に嫌だが。


「えー。ここまで話したんですから、もう全部教えてくださいよー」

「拡散されそうだから嫌」

「水月さん私のこと何だと思ってます!?」

「ギャル?」

「……ギャルかぁ。くっそいろんな意味で反論できない……」


 偏見であることは承知の上ではあるが、ギャル系の人種はその手の情報リテラシーが低そう。それを抜きにしても、近藤さん個人もポロッと口を滑らせそう。


「うぅ……。じゃあ何かヒントください。アカウントの頭文字とか、フォロワー数とか」

「んー、じゃあフォロワー数で。……いくらだったけ?」


 ササッと自分のアカウントを開いて確認。えーと、どれどれ……?


「十、万人ちょい? ……あ、十万超えてた」

「じゅうまっ……!?」


 なんとビックリ。もう直ぐかなとは思ってたが、いつの間にか越えてたとは。


「……え、あの。もしかして水月さん、実はSNSじゃすっごい有名人だったりします?」

「いや全然? 暇潰しに人気作品の絵ばっか書いてたら、なんかフォロワーが増えてただけの一般人です」

「絶対嘘だ……!」


 本当なんだけどなー。


「水月さん。やっぱり私と付き合いません? お試しでも全然良いんで」

「さっきの台詞思い出そうねー?」


 ついさっきまで、告白は相手からして貰いたいとか乙女チックなこと言ってたでしょキミ……。フォロワー数判明した途端に告ってくるの、もうなんか清々しすぎるでしょ。一周回って嫌いじゃないレベルだよ。


「何度も言うけど、未成年淫行とかで捕まりたくないので駄目です」

「そんなー……」





ーーー

あとがき


 前々から存在していた、主人公のイラスト趣味についての設定開示。

 単純にセンス……色彩感覚含めた諸々が高レベルなのと、思った通りに身体を動かせる系の才能マンなので、脳内イラストをそのまま出力できるタイプの神絵師。

 そのため筆も早いし、数が描けるので上達も早い。ついでに脳内イラストを出力できるので、絵柄の幅もメタクソに広い。

 現在進行形でイラストレーターとして活動できるし、本気で打ち込めばイラスト一本で食べていけるぐらいには素質がある。


 なお、コレはイラストに限らず、大抵のことに適応される。主人公、マジでなんでもできる系の器用さがある。プロローグの友人評価が文字通りの意味なやつ。

 他人に対する興味関心が欠けている代わりに、溢れんばかりの才能を天から与えられた才能マンですコイツ。


 音楽系のセンスも技術も、本気でやればシルキーに並ぶよ。なんでもできるが故に、本気で打ち込むことは滅多にないけど。



 それと話は代わりますが、もしかしたらイブに新作出す……かも? カクヨムコンに参加するか、ずっと悩んでるんですよね。

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