第38話 シルキーさんとエッチなイタズラ その二

 結局、すったもんだ……千秋さんの泣きが入りそうになったために、千秋さんの下着に関する追及はしないという形で落ち着いた。


「にしても、エッチなイタズラねぇ……」


 ただそれはそれとして、話題が話題である。あまりにも濃い、いやアクの強いテーマであったために、そう簡単に切り替えれるはずもなく。

 そんなわけで、継続してくだらないトークが続こうとしていた。……まあ、続けようとしているのは俺なのだが。


「こうして考えると、セクハラって難しいのな」

「遥斗君の場合、セクハラというよりパワハラだもんね」

「そのパワーって物理指してる?」


 人聞きが悪いなオイ。別にパワハラなんてしてないっての。ハッカ油だって冗談でしかないわい。


「まあ実際、不名誉な疑い掛けられるのは癪だったから、全力でエロ方面にいかないよう茶化してはいたけどさ」

「あ、うん。そうだよね。流石に意図的だよねアレ。……素でやってたらどうしようかなって、ちょっと戦々恐々してたよ」

「んなわけ」


 人の下着にハッカ油ぶっかけようとするなんて蛮行、素の思考回路で出てくるわけないだろうに。

 ちゃんとネタ方面に頭切り替えて、その上で頑張って捻出したに決まってんでしょ。そこまで愉快な脳みそしてる人間、そうそういないっての。


「いや、なんだかんだで気を遣ったんよ? 不快にならないレベルの、こう……生々しくならないレベルって言うの? ちゃんと千秋さんに合わせて、ド直球かつお下劣にならない範囲に収めてさ」

「まあまあ尊厳踏み躙りにきてなかった?」

「千秋さんの用意した小道具が悪い」

「人の下着を小道具って言った!?」


 小道具扱いしなきゃなんなかったって話なんだわ。そりゃ使わないなら越したことはないけど、状況的に放置もできなかったんだから仕方ない。

 むしろあの致命的な状況から、ちゃんとネタ方面に軟着陸させた俺のアドリブ力を褒めてほしい。


「というか、セクハラは『ハラスメント』だからね? 難しいとかそういう問題じゃないよ。やっちゃ駄目だよ」

「それはそう。確かに今回の例だと適切ではないか。バッチコイって感じだったもんね、千秋さん」

「い、いや。流石にバッチコイとは言ってないから……」

「言ってましたが」


 エッチなイタズラされたいって、わりとハッキリぶちまけてたでしょうが。……むしろコレのがセクハラじゃね?


「ま、ともかく。こうして漫画みたいな状況を体験してみると、ラブコメ主人公って凄かったんだなって話よ。あんな詰みみたいな状況からピンクな雰囲気に持ってけるのも凄いし、逆にビンタ程度のお仕置きで済まされるのも凄いし」

「取り巻く状況的には、遥斗君もわりとラブコメ主人公みたいなもんだと思うよ?」

「元凶がいけしゃあしゃあと言うじゃないの」


 誰のせいでこんなけったいな状況になってると思ってんだか。

 そりゃ確かにね、好き好きオーラを放っている美人さんがいて、付き合ってもないのに通い妻みたいなことしてくれてる現状は、ラブコメ的と言えるのだろうけども。

 どう考えても、ヒロインポジの千秋さんがキワモノすぎるんだよなぁ……。フィクションならともかく、現実だとちょっと遠慮したいと言うか。


「あ、じゃあじゃあ! ラブコメ主人公の修行しようよ! ちゃんとラッキースケベからピンクな雰囲気に移行できるように!」

「本音は?」

「さっきの失態を挽回しつつ、遥斗君とイチャイチャしたいです!」

「見た目に反して、恥の多い生き様してるよね千秋さんって」

「遥斗君は言動の割にイント高めなディスしてくるよね」


 そりゃ多趣味が売りの学生だし。と言っても、この手のレスポンスは基本がネットスラング由来だったりするが。

 読書もしないわけではないけど、純文学系はしっくり来なくて触り以上に手を付けなかったんだよな。その触りだけですらパワーワードがザックザクな辺り、昔の文豪の凄まじさを実感しているが。


「ま、ともかく! やってみようよ、ね!?」

「強行しようとするな」

「良いじゃん良いじゃん! ほら、遥斗君にだってメリットはあるよ!? 私のいやらしい姿とか見れるかもだよ!?」


 そんなことを言いながら、千秋さんは流し目で自分のスカートの裾をゆっくり持ち上げ始めた。

 何度も言うが、千秋さんの容姿は極めて優れている。それこそ、ストーカー行為の嫌悪感を許容範囲まで減衰させるぐらいには、恵まれた容姿をしているわけで。


「……」


 つまるところ、反応に困るのである。わりと色仕掛け自体は効果がある分、余計に。


「ほ、ほら! 遥斗君の工夫次第だと、もっと奥まで見れるんだよ!? お触りだってできちゃうかもだよ!? 男の子だったらやるっきゃないでしょ!?」

「声震えてるけど」

「そりゃ予想以上にガン見されて恥ずかしいからね!」


 じゃあやるなし。あと普通にガン見ぐらいするわ。自分で言うのもアレだが、俺かなり図太い方だし。分別があるからしないだけで、見て良いなら普通に見るタイプぞ。

 ちなみに千秋さんの今日の服装は、ノースリーブのシャツにロングスカートという、夏場が近い今の季節にマッチしたもの。つまり結構隙が多い。

 で、現在はスカートが膝上まで上がっているので、要望通りエッチなイタズラをしたら簡単にパンツは見えると思う。


「……ふくらはぎのところ、剃り残しっぽいのあるけど」

「んきゃっ!?」

「まあ嘘だけど」

「っ、あのさぁ! 遥斗君それセクハラ!!」

「自分でしろって言ったじゃん」

「エッチなイタズラとセクハラは違うって話したじゃん! わりと今のは許されないラインだよ!?」

「あ、はい」


 そんなに駄目? 駄目。そっかー。




ーーー

あとがき

更新の日って忘れてたので、ササッと書いて投稿。

ところで、こういう日常系ラブコメの文字数って、ボーダーどれぐらいなんでしょうね?

私は二千後半から三千台を意識してますが、手軽にサラッと読める二千前半が良かったりするのでしょうか?

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