からかい
「そんなに見詰められると何をするかわからないぞ?」
覗きこむ少女に、目を開けたキースは、にやりと笑って見せた。
「お、おき、起きて居たんですか」
慌てた弾みで声すら上擦ったルルは顔を真っ赤にさせた。
光を含んで綺羅やかに艶めく金色の髪に縁取られた愛らしい少女の慌てふためき様に、草地に寝転がっていたキースは、自分の頬が緩むのを止められない。
猫族の愛らしい少女。恥ずかしさに赤くなる顔も、慌てふためいてどうしていいか困惑に口をへの字に曲げる顔も、どの仕草も、愛らしい。愛おしいと思ってしまう。
たったの一目で惚れた弱みなのか、腕に抱いたことも無いのに心が満たされる。
「なぁルル、キスしようか?」
「へ?」
キースの提案に目を瞬かせたルルは顔を更に赤くして驚愕に声を失った。
「キスしよう」
「だ、駄目です! しません!」
裏声になっている自分に気づかず全力で拒否する少女に、キースは思わず吹き出した。
「キースさんッ!」
からかわれたと知ってルルの非難の声に怒りが滲む。
良すぎる反応に、この手のやり取りに免疫が無いのがまるわかりで、本当に可愛い。
だからこそキースは笑いながら、不安に駆られる。
警戒心の無い娘。
警戒する必要のない娘。
他人との線引に一生懸命になって、自分の心の領域まで測れない娘。
測る必要の無い娘。
心を占める事を許している異性を、胸に秘める娘。
恋とも愛とも言えない、別の何かを抱く娘。
ルルが求める、異性、とは。
何なのだろう。
兄と、自分との、
線引が出来ていない娘。
自覚があるのだろうかと最近は疑うようになった。
危険とわかっていながら引き下がらない理由が知りたい。
家族だからだろうか。
兄妹だからだろうか。
からかうだけで真っ赤になる娘。
少女は、世界を知らなすぎる。
「ルル」
「……なんですか?」
むくれて下唇を噛んでいる少女に、キースは、やっぱり可愛いな畜生と思ってしまう。
「結婚しよう」
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