第7話


「イケメンって、あんなのですか?」


 楠も客も出て行って、二人きりになったところで宮川さんに尋ねた。

 気を紛らわせようとキャラクターくじの残数確認を始めたが、手が震えてどうにもならなかった。

 次の瞬間、宮川さんが俺の神経を逆なでした。


「榎本、ヤキモチやいてる?」


 なに言ってんだ、この人は!

 ここで「はい、そうですよ」と言えればどれだけ楽だろう。今まで抱えていた気持ちをぶつけることが……できるわけない。


「イケメンがこの世に生存する確率知ってる? 日本の人口が一億、五億人? そのうちの半分がイケメンだから貴重なんだよ、この国のイケメンは」


 いや、ちょっと……なに言ってるかわからない。

 一億五億ってどんな単位だよ、つーか日本の人口知らねーのかよ。一億二千ちょっとだよ。全人口の半分は女性でイケメンってのが男に適応されるなら、日本の男は全員イケメンの部類には入るな……

 イケメンの定義ってなんだっけ?

 かっこいい人?

 それなら俺も、内面は男らしいと思いますよ。

 俺のことも少しは、見てくださいよ。

 好きだ、好きです。

 好きなんです。


「そっすね、好きです」


 ……え、あれ? 声に出た?

 やっべ、誤魔化さないと。


「ヤキモチ焼いてますよ。俺、あんたのこと好きだから」


 さらにやばいこと言った気がする!

 けれど、ちらっと窺った宮川さんの耳が真っ赤に染まっていて、それがとてつもなく愛らしくて、まぁいいかと思ってしまった。


 顔を上げると、太陽の光が燦々と降り注いでいた。

 実家のすぐ近く、今ではシャッター街になっているが商店街というものが存在する、そこそこ田舎のコンビニ。

 そこが俺のアルバイト先、宮川さんを好きになった場所。


 外見だけじゃない、人の内側に恋することを教えてくれた人。

 この想いは本物だって、自信を持って言える。


 どっちに転んでも構わない、気持ちを伝えることができてよかった。

 だけどもし叶うのなら、これからもずっと彼女を想い続けていきたい。

 そう願って、彼女からの返事を待った。



 

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