学校と友だち
翌日、最悪な事件が起きた。
「そのハンカチ、なぎさちゃんのだよね?」
教室の隅でざわざわしていた女の子達の視線がいっせいに、わたしに向けられる。
「……え?」
「なぎさちゃんが無くしたハンカチと同じ柄なの、それ」
簡単に説明すると、なぎさちゃんとやらのハンカチが無くなったらしい。大好きな従兄からもらったもので、ずっと探してたって。
それは今日わたしが持ってきたハンカチと同じ柄だから、なぎさちゃんのじゃないか、盗ったんだろう、と。
「ちょ……ちょっと待ってよ」
わたしがよそ者だからって、こんなイジワルは酷すぎない?
言っておくけどこれは正真正銘、わたしのハンカチだ。名前書くの忘れてたけど、本当にわたしの物で……。
「酷いよ、なぎさちゃんに返しなよ」
正直に言っても信じてもらえなくて、「先生に言うからね!」と言われてカッとなった。
持っていたハンカチを、なぎさちゃんに投げつける。
「いいよ、そんなの! いらない! わたしのハンカチだけどね、それ。欲しいならあげる!」
目尻に涙が溢れたので、ランドセルを背負って教室を飛び出した。
酷いとか最低とかの言葉が聞こえたけど、酷いのはどっちよ。
わたしは悪くない、悪くない……。
*
「ねぇ、そう思うよね⁉︎」
いつもの坂道、塀の上に白猫はいた。
唾を吐くように問いかけると、白猫はゆっくりと瞬きを二つした。
「酷いよ……こんな街大嫌い、大嫌いなくなっちゃえばいいのに、みんな消えてなくなればいいのに」
海に向かって叫ぶと、背後でドサっと大きな音がした。
なんだろうと思って振り返ると、塀の上の白猫がいなくなっていた。その身体はわたしの足元に、重い荷物のように転がっている。
「うそ、落ちたの? ねぇ、大丈夫?」
身体を揺らすと、白猫は「ぐぅ」と妙な声を出した。
「お医者さん……お医者さんのとこ、連れてってあげる!」
猫を抱えて坂道を下る。
ふわふわの毛並み、ドクンドクンと脈打つ白猫の身体はとても温かくて、急がなきゃと思った。
急いで助けなきゃ……!
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