第15話 そう言われると、なんだか怪しさ満載なんだけど……

 オレとクロスズは、偽母を伴って自宅を出た。


 そうしてオレは、移動中にクロスズへ説明する。


「とりあえずホテルを予約しといたんだ」


「ああ……なるほど。それでおばさんが必要なのね」


「そういうこと。未成年だけじゃ宿泊させてくれないからな」


 ネットで調べたら、保護者の同意書があれば大丈夫のようだが、書面でいちいちやりとりするのも面倒なので、であれば直接連れて行ったほうが面倒なくていいだろうと思ったのだ。


 他人のクローンは、本人オリジナルの知識や経験も保有しているから、細かいやりとりも任せられるし。


 あと念のため、近隣都市のビジネスホテルにしておいた。地元のホテルでは、クロスズと鈴音が鉢合わせでもしたらマズいしな。


 ということでオレたちは電車で三十分ほど移動して、ネットで連絡しておいたビジネスホテルに着くと、つつがなく予約することが出来た。


 この辺のホテルだと相場がだいたい1泊6000円くらいで、土日祝日は跳ね上がってしまうから、そのときは自宅に泊めるという段取りにした。これなら、一ヵ月程度ならオレの貯金でもなんとかなる。


「なんだかごめんね……わたしのために……」


 手続きを済ませ、オレたちはいったん屋外に出てくると、クロスズはしょんぼりした感じで言ってきた。オレにお金を使わせていることに引け目を感じてるんだろう。


「気にすることないさ。それにお金なら、これからいくらでも入ってくるから」


「そう言われると、なんだか怪しさ満載なんだけど……」


「大丈夫デス。まったくもって合法的な手段でお金を得マス」


「まぁ……なんとなく予想は出来るけどね……」


 それからオレは、駅前のデパートのトイレで偽母を消去した。偽母が着ていた衣類はクロスズが回収して、オレが予め持参しておいたボストンバックに詰めておく。


「ほんと……あっけなく消えちゃうんだね、クローンって……」


 クロスズにクローン消去の様子を見せるのは失敗だったと思うも、さすがに女子トイレにオレが立ち入るわけにもいかないしな。どうやっても、服の回収にクロスズの力を借りなくてはならなかったのだ。


 だからオレは、慌ててクロスズに言った。


「それはそうだけど、クロスズは違うからな? 何しろお前は、オレが初めて作ったわけだから思い入れもあるし、自我も100%持たせているし、つまりは特別なんだから……」


「そっか。なら嬉しいな」


 オレがそう説明しても、クロスズは少し寂しげに笑っていた。

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