第11話 大変にいい香りが感じられて……
母さんに気づかれずクロスズとオレは風呂に入ることが出来て、その後はそろりそろりと自室に戻る。
「ふぅ……なんとかなったな……」
オレも風呂に入ったというのに冷や汗が浮かんできたので額を拭うと、クロスズは失笑した。
「なんだか……隠れんぼしているみたいで楽しいかも」
「油断しないでくれよ? いくら幼馴染みだって、この時間に、しかもオレの寝間着を着ている状況なんて説明出来ないんだから……」
「確かに……でも、おばさんが急に部屋に入ってきたりはしないの?」
「ああ、それは大丈夫。ノックはしてくれるから」
「そっか。ならあとは、静かにしていれば安心だね」
そんな会話をしたあと、オレたちはすることがなくなってしまう。
暇になると隣のクロスズを非常に意識してしまい、だからなのか大変にいい香りが感じられて……オレは思わずドキリとした。同じシャンプーとせっけんを使っているはずなのに、どうしてこうも違うのだろう……?
このままじっとしていると変な気が起きかねなかったので、オレはいそいそと立ち上がるとタブレットPCを取り出した。
「対戦ゲームでもやるか? オレはスマホでプレイするから」
「うん、そうだね。でもわたし、あんまりやったことないから教えてね」
「ああ……でも会話はテレパシーにしておこう」
そんな感じで暇つぶしを始めてしばらくすると、一階から物音が聞こえてくる。どうやら父さんが帰ってきたようだが、父さんがオレの部屋に来ることは滅多にないから問題ないだろう。
そうしてオレたちは、思いのほかゲームに熱中していたのだが……不意に、階段を上る足音が聞こえてきた。
(クロスズ! 布団に隠れて!)
(う、うん!)
オレはテレパシーでそう指示すると、クロスズは布団の中に頭まで入り、オレも布団に入る。
階段を上る足音は、オレの部屋を素通りしていき、隣の部屋の扉が開閉する音がした。
時計を見ると、気づけば12時を回っている。
(どうやら両親が寝たらしい)
(なら、わたしたちも寝よっか)
(ああ、そうだな……)
そしてオレは、ふと困ったことに気づく。
オレの部屋には、セミダブルのベッドひとつの寝具しかなかったのだ。
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