第2話 夢だというのに、オレは確信していた
オレの名前は
高校に入って数日で、交通事故にあって病院送りとなった……
しかし入院するのは精密検査をする数日で済みそうだ。何しろオレは、擦り傷一つなかったのだから。
「ほんと……よかった……淳一郎が吹っ飛んだときは、どうなるかと思ったんだよ……?」
入院翌日に鈴音が見舞いに来てくれて、涙目になって言ってくる。
「いや、オレも死んだと思ったんだけどな。この通りピンピンしてるよ」
「検査の結果は?」
「今のところまるで異常なしだって。お医者さんもびっくりしてた」
「そう……本当によかった……」
鈴音は、心底胸を撫で下ろしている感じで吐息をつく。最近はあまり接点がなかったのだが、改めてみるとやっぱ美少女だな、コイツ。
瞳はちょっと儚げで、今は涙で潤んでいるから儚さに拍車が掛かっている。髪の毛はストレートで背中の中程まであり、とても輝いていた。体つきは華奢で胸も控えめではあるのだが無いわけではなく、その慎ましやさがむしろいいという友人も、中学校にはたくさんいた。
そんな美少女が幼馴染みであること自体、オレはラッキーなのだろうけれども……付き合いが長ければ長いで、家族のように感じてしまうこともあるから、その先へ行くのはそれはそれで難しいのだ。
まぁ……鈴音がオーケーしてくれるかはまた別問題だが。
「ところで鈴音。お前、なんであの場所に居合わせたの?」
「えっ!? そ、それは……だって隣の家から同じ時間に同じ高校へ登校するんだよ? あの場にいたっておかしくはないでしょ!?」
「まぁそれもそうか。だったらなんでそんなに慌ててんの?」
「慌ててなんかない! 淳一郎が変なこと聞くからでしょ!」
慌ててないのに慌ててそう言ってくる鈴音に、オレは首を傾げるしかなかった。
その後も雑談を小一時間ほどして、鈴音は帰宅する。
話し相手がいなくなると暇になりそうなものだが……しかしオレはそれどころではなかった。
暴走車にはねられて、体が入れ替わったその晩。
オレは夢を見ていた。
そして夢だというのに、オレは確信していた。
死にかけたのをきっかけに、オレはとんでもない超能力に目覚めたという確信を。
だからオレは、手のひらを見つめる。
そこには、鈴音の髪の毛が一本だけあった。
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