絶対服従のツンデレ美少女を『作って』、二人だけの隠密生活! でも幼馴染みに怪しまれてる……!?

佐々木直也

第1話 吹き飛んでいるときに、体が入れ替わったからだろうか?

 きっかけは交通事故だった。


 交差点に突っ込んできた暴走車を見て、オレは「あ、死んだ……」と思った瞬間、撥ねられる。


 そのとき、オレは間違いなく死んで──


 ──そうして、別の自分、、、、の体に乗り移っていた、、、、、、、


 非常識極まりない話だが、何しろそうとしか言いようがなかった。


 撥ねられたほうの体から、たましい的な何かがスポン!と飛び出したかと思うと、どこからともなく現れた新しい体に入ったのだ。


 そうして撥ねられた体はサァァァ……っと、砂山が崩れるかのように消えていった。


淳一郎じゅんいちろう! 大丈夫!?」


 声を掛けられたとき、オレは車道の中央に座っていた。すると向こうから、高校の制服を着込んだ美少女が駆け寄ってくる。今にも泣き出しそうな顔して。


「あ、ああ……鈴音すずねか。だ、大丈夫だ……と思う」


 一緒に登校していたわけでもないのに、どうして、幼馴染みの白石鈴音しらいしすずねがいるのか不思議だったが、その疑問はひとまず横に置いておく。


 オレは首や肩を回してみたが、とくに痛みはなかった。車に撥ねられ、いわんや吹っ飛んだはずだが血の一滴も出ていない。


 やはり……吹き飛んでいるときに、体が入れ替わったからだろうか?


 いや……ちょっと待て、そんな馬鹿な?


 体が入れ替わるってなんだよ。なんでオレは、そんな事実をあっさり受け入れているんだ?


 オレは首を傾げながらも立ち上がろうとするが、慌てた鈴音が制止する。


「た、立ち上がらないで! そのまま座ってて! あるいは寝ていて!!」


「え、でも……ここは車道だぞ?」


「純一郎は車に撥ねられたんだよ!? そんなこと気にしてる場合じゃないでしょ!」


 しかしなぁ……


 この交差点は、すでに黒山の人だかりだ。事故現場の見物人なのだろうが、だからこそ、注目を浴びまくっている。


「けど、こんなところで寝っ転がっているだけなんて、恥ずかしいんだが……」


「何を馬鹿なこと言ってるの!? いいから大人しくしていて! いま救急車を呼ぶから!」


 そうして鈴音は、スマホを取り出すと119番に電話する。その指先も声も震えまくっていた。


 まぁ……幼馴染みであるオレが交通事故なんかにあったんだから、動揺するのもやむを得ないか……


 オレは観念して、車道に寝そべる。


 空は陰鬱の曇天で、今にも雨が降りそうだった。

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