第2話「野宿するしかない(改稿済み)」
俺のみに起きたのはまさかの異世界転生だった。
生前、アニメやラノベを多少なりとも嗜んでいた俺はよく知っている。
何かいい行いをして死んだら、次の人生を異世界で謳歌できるなんて言う話だ。
しかし、実際のところ現実はそう甘くはない。
俺が転生した先は無能の弱者だったのだから。
なんて、悲壮感漂う始まり方をしてしまい申し訳ない。
改めまして、自己紹介を。
俺の名前はレオン・ゲネシス・シュナイダー。
世界でも名高い魔法新興国『プロイシンドイツェ王国』に仕えるシュナイダー公爵家の三男であり、将来を約束されたまさに恵まれし14歳……(笑)。
そんな、あからさまにいい生まれなはずの俺がどうしてこんな薄暗い森の中を彷徨っているのか。
その理由はものすごく単純だ。
理由、それは——俺が無能であるからだ。
無能? たかだかそんな理由で自分の子供を魔物がうじゃうじゃいるような森の中に放り投げるかと言われれば答えは”イエス”だ。
前世にもモンスターペアレンツだとか、幼子をほったらかしにしてしまう両親だとか色々な親がいたがそれはこの異世界も同じ。
魔力という未知の力が飛び交う、魔法が当たり前の世界で魔法に対して適性がない、使えない人間など無価値。
しかも、それが名家の子供であるということがより間違っていた。
そう、俺は生まれながらにして無能で無価値で間違っている存在だったのだ。
もちろん、無能ではありながら貴族。結局のところはなんだかんだ言いつつも地位は保たれると思っていた。
しかし、現実は甘くはない。
無能、無価値な存在と定められた俺を待っていたのは地獄だった。
もちろん、決めつけられるまでもさしていい扱いを受けていなかったがそれが顕著だった。
兄妹、両親、そして親戚からは忌み子のような扱いを受け、地位が低い従者からも無視だの舌打ちだの、挙句の果てには俺の服を洗濯してくれなかったり、料理人は狙ったかのように食材をそのまま出して来たりと色々とひどい仕打ちを受ける日々。
そんなわけで俺は名家の領地を追放され、金貨一枚だけを渡されて領地の外にある魔物の森に置いてこられたというわけだ。
「——俺が転生者じゃなかったらどうしてたんだろうな」
ため息が漏れる。
ほんと、俺の精神年齢が22歳でよかった。
これがモノホンの14才だったら今頃怖くなってひとしきり泣いて死んでいたかもしれない。
そう考えるとレオンの未来的にも俺の心が宿っていてよかったかもしれない。
って、俺が無事じゃないんだけどさ。
いくら22歳でも魔物が出ると言われている森の中に一人でほっぽり出されたらどうすることだってできないと思うんだが?
一応、魔物の森の東に向かって歩けば村があるっていつの日にか小耳に挟んだのを覚えているけど、正直それを知ってたからなんだって話だ。
だいたい、魔物の森はかなりの広さがある。
誰の土地でもなく、一応国の領土ではあるが一種の無法地帯。
盗賊や魔物の住処で、冒険者でもなかなか寄り付かない場所だと聞いている。
俺、魔法使えないんだぞ!
つまり、自衛の方法がないと言える。
そんなの奴らが狙い放題な的みたいなものだ。
だいたい、どれだけ歩けばそこの村につくのかも分からない。
歩いたところで果たしてそこまで行けるのかも分からないし、状況的には色々と終わっているわけで。
「……」
にしても、そうだな。
異世界に転生する話の主人公たちはよくもまあこんな中色々と考えられる。
俺と来たら、不安と心配で心臓バックバクのドキドキなのに。
ただまぁ、こういう時こそ冷静にするのが大人の余裕っておじいちゃんが言ってたな。
ははっ、それももう前世の話か。
今の俺のおじいちゃんはあのデブで白髭生やした性格が悪そうなジジイだし、内面見たら報われない家系だ。
って悲観するのもやめよう。
まずは考えられるところから考えていこう。
「まずは、そうだな……色々と情報収集からだな」
ぼそりと呟いて、俺はおもむろに呟いてみた。
「魔法とか異世界だとか、そう言う系の作品は高確率でこう言えば出てくるよなっ」
ハッと息を吐いて、吸い込み、手を目の前に広げてこう呟いた。
「——ステータスッ!!」
直後だった。
まるで頭に衝撃を与えられたかのようにビリビリと電撃が走り、次の瞬間には俺の手の先にホログラムのようなものが映し出されていた。
「うぉ、ま、マジかっ!」
鼻息がフンス! と飛び出て、俺は一瞬だけ興奮が抑えきれなかった。
書かれていた情報はこうだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
〇レオン・ゲネシス・シュナイダー
年齢:14
種族:人間(元貴族)
性別:男
魔法適性:0/5
魔法属性:なし
オリジナルスキル:【
Lv:1
―――――――――――――――――――――――――――――――
「意外と悪くはない……のか?」
正直、見ただけではよく分からなかった。兄のステータスでも聞いてよかったけど、アベレージがドンなのか言われないとどれほどなのか知らないと意味ないし。
てか、本当に魔法は使えないんだな俺は。
MPとか0だし。
「ん? いや待てよ?」
目を凝らしながらステータスを見つめているとハッとした。
「……あれ、SPとINTだけ異様に高くね!?」
値はどちらも1000を超えている。
レベルとかの上限値がどこまであるのか分からないけど、レベル1にしては明らかに高いのはバカでも分かる。
そして、何より意味が分からないのがスキルだ。
SPが高いってことは魔法が使えない分はスキルで補えってことなんだろうけど、俺のスキルが【
なんだ、科学って。
スキルが科学?
魔法至上主義な世界なのに科学?
これはあれなのか?
とある学園都市に住んでるツンツン頭の幻想を殺しちゃう系男子高校生とお嬢様学校に通うツンデレ系ビリビリ超電磁砲系女子中学生に、禁書な魔術書を13000冊以上も頭に入れているインデックス系魔術図書館が主要人物な魔術と科学が交差しちゃうあの話なのか!?
って、オタクでごめん。
まぁ、そんなわけないだろうけど……とにかく、仮にそうだったとしても意味不明だ。
いや、あの世界と似てないこともないか。
俺って0だし。レベル0だし。無能力者だし。
魔法が使えないって意味ではツンツン頭とも一緒だな。
とまぁ、そんな茶番は置いておいて。
このスキルはとにかく意味不明だ。
何かレベルアップするとか、ステータスが上がるだとか、その辺なら分かるけど科学だなんて言われてもだ。
明らかなる情報不足。科学と言われても実際何をできるかが点で分からない。
だいたい、この世界は魔法に極振りしすぎてる節がある。たいていの場合はスキルは魔法のおまけでしょぼいっていうのが普通だ。
それも魔法に準じてるものになるし。例えば【詠唱簡略化】だとか【魔力量×2】だとかな。
それが俺だと抽象的で壮大だ。
一つの概念ともいえる。
「……科学、ねぇ」
一体、どういうことなんだろうか。
調べる必要がありそうだな。
《あとがき》
新作です!
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