気迫




 去年までは仲間と一緒に花道を歩いていたのだ。

 それが、今年の節分の前日。

 節分に向けて何か問題がないか、陰陽師と己の肉体の調子を確認していた時だった。

 調子は頗る良かった。

 けれど、意識と肉体は乖離していたのだろう。

 大豆を当てられた俺の肉体は今迄とは違う反応を見せたのだ。







「「げ」」


 どうしてこんな山中に大豆入りの升を持った子どもが居るのか。

 今時分であれば、学校に行っているはず。

 しかし果たして疑問を抱きはしても、慌てる必要は微塵もなかった。

 たかが子ども。

 よしんば全力で投げられたとしても、容易に避けられるのは必須。

 であるのに。


 どうしてか。子どもの妙な気迫に絡め捕られて肉体と意識が硬直している。

 

 黒鬼が黄鬼へ視線を送れば、顔が蒼褪めていた。

 同じ役立たずの鬼。

 大豆が当たればどんな反応を見せるか。などと、容易に想像できた。


(俺と一緒で弱体化、なおかつ、肉体が退行。そして、邪気に力を吸い取られて)


 終了。











(2023.1.9)


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