黒鬼




 節分。

 この日は鬼にとって花道と言ってもいい。

 無論、この日以外でも鬼は陰陽師に助力して、世の為人の為にと働いているが、華々しく活躍することはなく裏方に徹しているのだ。

 けれど、この日だけは違う。

 鬼の日と言ってもいいほどに、表で活躍しまくる日なのだ。

 なのに。


 無様だ。

 黒鬼はほんのちょっぴり涙を目尻に浮かべた。

 

 表では数多くの仲間が華々しく活躍しているのに、俺は一匹孤独に山の中へ身を潜めている。


(いや。一匹じゃないな)


 ひょいひょい能天気に後からついてくる黄鬼。

 鬼としての尊厳がないのかこんな日によくそんな平気な態度を取れるな悲壮感をどこへやった。


 言葉こそ発しなくはなったが、鬱陶しいことには変わらないので睨みつけて追い返そうと試みた。

 にっこり笑みを向けられて失敗した。











(2023.1.8)




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る