節分




 節分。

 二月三日(ほぼ)。

 鬼は外、福は内と言いながら、大豆、または落花生、もしくは両方をまいて、邪気を祓い、福を呼び込む行事(鬼も福も家の中に閉じ込める地域もあるそうだが、この地域は違うのだ)。


 鬼を追いやるなんて可哀想だ。鬼だっていい鬼が居るだろう。

 心優しいおこちゃまは言うだろうが、憐れむことなど微塵もないと言いたい。

 鬼は追いやられるのではない。


 大豆、または落花生に吸い寄せられた、もしくは纏わりついた邪気をその身に限界まで受け止めた瞬間、即、鬼界へ帰還し、邪気を栄養とする鬼花に捧げているのだ。

 捧げる過程がめちゃくちゃ面倒なので、帰還した鬼は約一日、鬼界に居続けなければならないのだが、それが過ぎれば人間界にきちんと戻って来る。

 だからおこちゃまよ。

 鬼を追いやったなどと、罪悪感で涙をちょちょ流すことはない。






「まあ、私たちには関係ない話なんですけどねえ」


 黄鬼は黒鬼に話しかけるも、黒鬼は知らん顔で歩き続けるだけ。

 人間界から邪気を少なくすることも、鬼界の鬼花に邪気を捧げることもできない役立たずの烙印を押されたのだ。

 一匹になってたそがれたいのだろう。

 そう考えた黄鬼は、けれど、どうしても初めて見つけた己と同じ役立たずの鬼から離れがたく、口を閉ざしてついていった。











(2023.1.7)


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