緑茶
「優しいお子さんでよかったですね」
「優しいっつーかくそ生意気な子どもだったけどな」
妙な気迫を発していた子どもと視線を絡めること、三分。
大豆入りの升に手をかけて取っていた投げる姿勢を不意に解いては、背中を向けて言ったのだ。
あと数年経ったら相手をしてやるよ。と。
いやおまえ何歳本当に今の子は発育が早いんだからもー。
「いやっつーかこの状況も何?」
「通りかかった屋台でしっぽり一杯飲んでいます。おばさん。この昆布の佃煮美味しいですね」
「ありがとねえ」
「いや」
「え?美味しくないですか?困りましたね。食の好みの不一致は仲違いを引き起こすそうですよ」
「あらあら。そうはならない方たちも居ますからねえ。そんなに心配することはありませんよ」
「おばさん、本当ですか?黒鬼さん、よかったですね」
「いや」
いや本当にこの状況何?
のほほん屋台の主と話す黄鬼を前目に横目にと見ながら、黒鬼はお猪口に手を伸ばした。
酒ではなく緑茶だった。
美味しかった。
(2023.1.10)
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