第103話 異世界からの通話再び。
なんと、緒方巡査が追っていたのは犯人でも迷子でもなく、焼き芋屋さんの車だった……。
で、とってもとってもとっても言いにくかったんだけれど、正直にそのことを無線で報告しました。
無線の向こう側からは、皆一様に、ため息交じりに『『『――……了解。』』』との返答が帰ってまいりました。
で、本署に呼出しを受けました。はい。
夜間に招集かけて、全署員総動員で捜索態勢をとって。
挙句の果てに焼き芋だからね。
そりゃ怒られるわな。
というか呆れられた。
全県の配備や隣県各署に応援を頼む前だったのがまだ救いだった。
で、緒方巡査が無事だったのは良かったのだが、という前置きのもとに朝までお説教をくらいました。
署長や副署長をはじめ、各課長総出で説教くらうなんてオレたちが丸舘署で初めてなんじゃないか?
いや、晴田県警全体でも初めてだろう。
いくら勤務時間外とはいえ、制服着て拳銃つけたまま焼き芋買いにいくなとか。
捜索依頼の無線を入れる前にもっとちゃんと状況を把握しろとか。
まったくもって、おっしゃる通りでございます。
オレたちが説教を受けている間、ルンとハヌーは電話交換室にいて、署員皆さんからのお菓子攻めにさらされていた。
夜にわざわざ呼び出されて、結局間違いでしたーって言われた署員の皆さん。
その呆れとお怒りは、ルンとハヌーとのお菓子ふれあいほっこりタイムでうやむやにしてほしい。
ちなみに、召集された後の署員の皆さんは、家に帰って寝直して翌日代休というわけにはいかず、夜が明けたら普通に日勤業務である。
朝方まで怒られたオレ達なんて当然徹夜だし。
まあ、説教したほうの署長たち幹部も徹夜なんですけどね。
で、オレたちもようやく駐在所に戻ってまいりました。
太陽が黄色く見えるぜ。
朝食として、昨日コンビニから買ってきた食料をむさぼる。
焼き芋?
昨夜本署に呼び出されて行く前に急いで食べましたよ。
なにせ夕食がまだだったからな。
空腹も相まって、温かい焼き芋はとてもおいしゅうございました。
ルンとハヌーは署員からのお菓子攻めで満腹だったようで朝食は遠慮していたな。
というか、うちのタヌキは
タヌキは雑食だとは聞くが、まさか人間一人分の食費がかかるとは思わなかった。
朝食にタマゴかけごはんとか、納豆ごはんとか、タヌキの食事じゃないよね?
しかも、茶碗にスプーンで食べてるし。
そのうち箸も使いそうで怖い。
朝食を終え、昨日の日中の忙しさの疲れと昨夜の騒動、徹夜の疲れが身体を襲う。
今すぐ布団にダイブしたいところだが、勤務時間中にそんなことをするわけにはいかない。
そもそも、昨夜の騒動や徹夜の原因を作ってしまったのはオレたちなのだ。
丸舘署員全員が睡眠不足で勤務しているというのに、オレ達だけ寝る訳には行かないという申し訳なさもある。
だが、疲れと睡魔は確実に仕事の確実性や集中力を奪うことは自明の理。
せめて、緒方巡査と交代で机に突っ伏して寝ようかと提案しようとしたところでオレのスマホに着信がある。
こんな疲れた時になんの用だよーーと思いながらスマホの画面に目をやる。
その番号は、先日電話帳に登録した人で、
異世界に転移して失踪扱いになっている佐藤真治さんのものだった。
「はいもしもし、武藤です。」
オレは電話に出た。
さすがに異世界からの電話を無視するわけにはいかない。
電話口の向こうは、番号通りにサトウさんだった。
『あ、お忙しいところ申し訳ありません。異世界にいる佐藤です』
「はい、どうされましたか? もしかして、ルンのご兄弟との通話でしょうか?」
以前サトウさんと電話をした後、向こうにいるルンの兄弟たちと、ルンとで数回通話を繋いだことがある。
最初は涙ながらの電話での再会であったが、回数を重ねるごとに安心感が募っていったのか、最近では簡単な状況報告で終わるようになり、その頻度も減ってきていた。
なので、すっかりその件なのかと思ったのだが――
『いや、今回は違いまして。じつは、今私の横にいる人? がそちらの世界に用があるとかで』
「はあ、人? ですか?」
『はい。人? なんです』
『ちょっとシンジー! 早く代わりなさいよー!』
あれ? この声……
『もしもし? あ、しもしも? 武藤敬冶ー? いや、刑事ー?』
なんだこいつ。
そこかで聞いたことがある声だ。
「いや、武藤ではありますが、刑事ではありません。」
なんかイラっとするが、相手は異世界の人? らしいし、丁寧に返しておく。
『知ってるわよー! ちょっとしたジョークじゃないのー! いっつあらいとじょーく! しもしも~?』
あ、思い出した。
この声、確か以前に交通課のダミー人形ドクダミーくんが動いた時に
『で、むとー君! いま駐在所にいるよね? ってことは、そばに
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