第74話 現行犯逮捕
暴走するフェア〇ディの追走を続けているが、相手は止まる気配を見せない。
このままでは、検挙する前に相手が重大な事故を起こす可能性が高くなってきた。
そろそろ限界か? 幸い、車両ナンバーは記録している。現行犯は無理でも、今後の捜査での検挙を考えるべきか?
そんな葛藤を抱いていたその時、
「晴兄ちゃん! このままだとあの人ぶつかって死んじゃう! わたし、なんとかしてみるからもうちょっと近づいて!」
ルンがなにかするようだ。
いったんは開けた車間距離を再び詰める。軽トラもゆうに150㎞/h以上は速度が出ているのだが、そこからでもアクセルを踏み込むと加速はスムーズ。
この不可思議な軽トラのパワーアップは何なんだろうと疑問を持ちながらもこの場で考えていても答えがわかるわけではないと思い直す。
スムーズな加速でフェア〇ディのすぐ後ろに着ける。
すると、ルンは両手を祈るように握り合わせ、前方に熱い視線を送る。
フェア〇ディの運転手がルームミラーをちらっと見て、ルンと目が合う!
「前の
ルンの祝詞のような祈りの言葉が口から流れ、ルンの目から魔力のような光が瞬く。
その光がフェア〇ディのルームミラー越しに相手の目に吸い込まれる!
変化は劇的だった。
フェアレ〇ィは徐々に速度を落とし、左側に寄せて停止する。
徒歩での逃走を警戒してオレと緒方巡査が車両両脇から近づいていくと――
その運転手は、滂沱の涙を流しながら両手を挙げて車から降りてきた。
「
「よし、そうだ。本当に危なかったんだからな。これから、心を入れ替えて再出発できるようになるためにも、あなたを逮捕します。手を出してください。
「
「〇月×日、11時37分、現行犯逮捕します!」
オレはフェア〇ディの運転手に手錠をかけた。
さて、本来ならば手錠をかけた相手をパトカーの後部座席に乗せて本署まで移送するところなのだが、あいにく軽トラパトカーには後部座席がない。
荷台に乗せるのも、もし逃走を図られた場合非常に危険であるので、素直に交通課員の応援をその場で待ち、普通のパトカーの到着を待って交通課員に引き渡した。
「ルン、ありがとうな」
「そうです! ルンちゃんはすごいです! 今日、私たちは一人を逮捕するとともに、一人の命と将来を救ったんです! 私、感動しました!」
「ああ。ルンのおかげだ。」
こんな時は、警察官やっててよかったなって思えるな。
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