第73話 逃走中
「よし! 追いついた!」
一時停止標識を無視して高速で走るスポーツカーを追尾していたオレ達は、なぜか軽トラのオートマシフトレバーに新たに発生していたボタンを押すことで一気に加速、なんと140㎞/hオーバーのスピードで一気にフェア〇ディに追いついた。
「前の車! 止まりなさい!」
軽トラのパトカーカスタマイズ時に装着された車外マイクで前の暴走車に呼びかける。
ちなみに、車外マイクと無線のマイクは位置が隣り合っていて間違う事も多々あり、県内全域の無線に「止まりなさい!」などと流れることも多い。
まあ、今回は間違うことなく無事に車外マイクだったようだ。
で、呼びかけられたフェア〇ディだが、呼びかけに応じることもなく、更なる加速をしやがった。
畜生、逃げる気だな!
オレはなぜかパワーアップした軽トラをフェア〇ディの後ろにつけ、速度を計測する。
「ルン! そこの速度計のところについている『計測』ボタンを押してくれ!」
「は、はい!」
ルンがそのボタンを押すと、レシートのような紙に現在の速度が印字されて出てくる。その速度は158㎞/h。確実に50㎞/h以上の速度超過なので、これだけでも減点は12点になる。
さらに、免停期間中なので無免許運転となり25点の減点で合計37点となり、免停期間中という事は少なくとも1回は行政処分歴があることになるから、最低でも4年間の免許取り消し処分となるだろう。
あ、一時不停止の2点も合計されて39点か。もう1点以上過去の違反があれば取り消し期間は5年になるな。
4年から5年も車を運転できないとなれば、当然仕事に通ったりするのにも支障が出るだろうし、現在勤めているのであればその職場からも何らかのペナルティーを食らうだろう。その会社によってはクビになってもおかしくはない。
なんて馬鹿な事をしでかすんだろうと思いつつ、コイツを無事取り締まって反省してもらうのがオレ達の仕事だ。なにより、こんな危険な運転をするやつを野放しにしては他のドライバーが迷惑だし危なくて仕方がない。
だが、暴走車の運転手は速度を緩めるどころか追跡を振り切ろうとして逃走を続けている。
まあ、捕まれば免許取り消しが待っているのだ。必死に逃げようとする気持ちもわからないではないのだが、それにしても危険すぎる。
「やばいな、このままじゃ事故ってしまうぞ」
かといって、ここで追跡を断念するわけにもいかない。
とりあえず、相手の興奮が落ち着くことを願い車間距離を開けて様子を見ていくしかないか。
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