第71話 追跡開始
「きたぞ!」
猛スピードで交差点に向かってくるスポーツカー。
目測ではゆうに100㎞/hは余裕で超えている。
レーダー速度測定器があれば、こいつは既に免許停止確実だ。なんといっても、この道幅の狭い市道は制限速度40㎞/hなのだから。
だが、この軽トラに速度を計測するレーダー機械は付いていない。速度違反を取り締まるには、一定の距離と時間以上この違反車の後ろをついて走り、この軽トラの速度計をもってしてその証明としなければならない。
とりあえず、この車はここでちゃんと一時停止するのか?
そんなことを思っていた矢先、
スポーツカーは一時停止を無視して走り抜けた!
「よし! 追跡だ! ルン! 赤色灯を!」
「はい!」
ルンが軽トラの屋根の上に赤色灯を備え付ける。
それと同時にサイレンを鳴らし、一時停止無視のスポーツカーを追跡する!
「緒方巡査! ナンバーは見えたか!?」
「はい! 所有者照会掛けます! —――――上中岡移動から照会センター!」
「――紹介者センターです、どうぞ」
「――車両所有者照会願う。職番〇▼◇◇□、丸舘地域緒方。ナンバー、晴田〇▼※、田んぼの『た』、□▼〇の●▼※□です、どうぞ」
「――了解。車種、フェア〇ディZ。所有者、住居、晴田県丸舘市~~~~~~、吉田〇男、—―――! この者、免許停止中、したがって――現在、無免許状態。繰り返す、その者、無免許状態、どうぞ」
「――上中岡移動了解!! 武藤巡査長! あたりです! 無免許運転の大物ですよ!」
「よっし、必ず捕まえるぞ!」
オレは軽トラのアクセルを思いっきり踏み込む。相手の車はかろうじて視認できる距離だが、相当距離を離されてしまった。
「でも、武藤巡査長?」
「なんだ?」
「この軽トラで、あのフェア〇ディに追いつけるんですか?」
「……まあ、やるだけやってみよう……。」
「――丸舘交通より上中岡移動!」
おっと、本署の交通課より無線が入った。
「――上中岡移動です、どうぞ」
緒方巡査が荷台の中のマイクを無線に連動させて応答する。
「――先ほど照会の車両、現在追跡中か? どうぞ」
「――そのとおり、どうぞ」
「――了解。その車両、先日交通課パトカーが追跡を振りきられた車両と同一の可能性あり。応援派遣する、現在地送れ、どうぞ」
なんと、一時噂になっていたあの暴走車両か。たしか、交通課が晴田署で一番速度の出るパトカーで追跡したにも関わらずぶっちぎられたっていういわくつきの奴だな。その時は夜間でナンバーも確認できずにみすみす取り逃がしたはずだ。
「――了解、現在地、丸舘市~~~~~~、当該車両、●▼〇方面に向かって逃走中! 現在鋭意追跡中です! どうぞ!」
よし、何とかして捕まえてやる!
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