第66話 ダンジョン調査④

 調査官の人が、水銀体温計の使い方について説明してくれる。


「まず、10分放置します。そうすると、ダンジョン内の気温に対して固定値が出ますよね。その後、更に1時間放置して、10分時点の数値と比較するんですよ。水銀は、なぜか『ダンジョン素』の濃さによって膨張率が変わるんです。で、その膨張率をもって、魔物の強さとかが推し量れ、魔物が強いイコール成果物も高額になりますからね。それで、【危険度】と、【資産期待値】を推し量るわけなんです。」



「なるほどー」



 思わず聞き入ってしまった。これは、世間一般には他言できない内容だな。


「他に、鉱物とか、植物とかが期待できるかどうかは、これを用います。まあ、これも90分放置しておくだけなんですけどね。」


 今度はなにやら透明な容器――シャーレかな? それに入った透明なジェル状のものを取り出して見せてくれる。


「これは、スライムとか言う魔物を倒すとまれに出てくる品なんですが、このジェル状の液体に、水銀を一滴垂らして攪拌すると、不思議なことに均一に水銀が溶けるんですよ。で、放置して、色に変化があれば、その色によって鉱物とか、植物の有無がある程度判明するという仕掛けです。といっても、素材の種類まではわかりませんけどね。緑ならば植物系、鉱物系の鈍色が出れば鉱物系といった感じですね。あ、もちろん、両者が混ざる場合もあって、その時は何とも言えない色になります」 


 すんごい勉強になるな。これは、緒方巡査がうらやましがるかもな。調査官の方に了承が取れたら、この内容は緒方巡査にも教えてあげなければ。


 見ると、自衛隊の人も、熊岱署の部長さんも真剣な顔をして聞いている。という事は、この人たちもこれまで調査に同行したことはあっても、詳しい内容までは知らなかったという事なのかな。


「では、【成長期待値】というのは、何を基準にしているのでしょうか?」


 おお、自衛隊の方が質問している。成長期待値? ダンジョンにはそんなものまであるのか。


「ああ、それも地震波ですね。波の波形を見て判断します。なんというか、波が途中でブツ切れた感じになるのは成長可能性が高い傾向にありますね。まあ、こっちの確度は6割に満たないんですけどね。あ、今日聞いた内容は、自衛隊さんや警察さんの内部ではいいですが、一般の方には内密にお願いしますね。一応、機密レベルCなんで。」



 ふむふむふむふむ。今日は何て勉強になる日なんだ。



 そんな話を聞いているうちに、あっという間に2時間ほどが経過し、調査は無事終了という事でオレ達はダンジョンを後にした。

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