第62話 出張

「よーし、ぼちぼち出かけるぞー」


「「はーい(了解)」」



 先日のオレ達3人での会議の結論を提出した後も、ルンはこれまで通りオレ達と一緒に行動を続けることになった。


 恩田課長いわく、もしルンが警察活動の手伝いをすることでストレスを感じたりしているようだったら、オレの軽トラを無理矢理買い上げて、どこかリゾート地とかに車庫を建物の中心に据えた建物を建てて、そこでルンには悠々自適な生活を送ってもらうような案も国の方から打診されていたようなのだ。


 当然、署長をはじめとする本署の幹部たちはもはやルンと離れることなど想像もできないわけで、ルンの残留を決定づけた、オレの書いた会議報告書は幹部連中から絶賛でお褒めの言葉を何度も頂いた。


 もちろん、オレも緒方巡査もルンのことはもはや家族同然、妹も同然と思っているので望むところである。



 で、今日の予定はというと、近隣の市町村に発生したダンジョンの調査への立ち合いを命じられたのである。


 世界中にダンジョンが発生して以降、少しの期間を置いて国には「ダンジョン庁」が。各都道府県には「ダンジョン部門」が新設された。

 何をどのようにしているのかはわからないが、ダンジョンの深さや危険性を測る尺度が開発され、全国各地のダンジョンには『調査』の手が入ることになったのだ。


 調査されたダンジョンは国のデータベースに登録されるとともに、民間所有も認められてはいるが、その包括的な管理は国と都道府県が行う事となり、国民の安全保障やら、ダンジョン資源の研究機関の立ち上げ、重要な資源や情報の一般及び国外への流出を防ぐ手立てやら、新たな税制の設立や法体系の整備などが急ピッチで進められた。


 そんなすべての基となる『ダンジョン調査』は都道府県の管轄で行われ、各都道府県警もその安全確保及び管内把握の必要性があるとして調査への立ち入り同行が義務付けられた。


 なんか、国勢調査みたいだなと思ったのは内緒だ。


 オレ達が今回、出張を命じられたのは、今後丸舘署管内にダンジョンが発生した時の為の研修というか、現場の見学のためだ。

 いまだオレの勤務する丸舘署管内にはダンジョンの発生は報告されてはいないが、一応、オレ達は『丸舘警察署ダンジョン課』の一員でもあるわけだからして、有事の発生に備えてこのような場数を踏んでおくことは必要な業務の一環なのである。



「今日はどこに行くんですか?」


「ああ、熊岱市にできたダンジョンらしい。発生したのは『大発生』と同じ時期。つまり、ルンがこっちの世界に来たのと同じ時だな」


「ふうん。けっこう発生から時間たってますけど、なんでいままで後回しにされていたんですかね?」


「さあ、そこまでの情報は入ってないな」


「遠くまでのお出かけ楽しみです!」




 こうして、オレ達3人は軽トラに乗車して一路熊岱市に向かったのであった。

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