第61話 会議は踊る②
「じゃあ、まずはルンが考えをまとめやすいように、オレから現状の再確認をしたいと思う。」
「「はい(了解)」」
「まずは、大前提として、ルンは向こうの、オレ達が「異世界」と呼ぶ世界からこっちに転移してきた。その結果、弊害というか、なぜかオレの軽トラの半径5mから離れられなくなってしまったわけだ。」
「うん。」
「で、幸いにもルンはオレの事を信用してくれて、だったら軽トラの持ち主であるオレの仕事を手伝いたいと、そう申し出てくれていたわけだ。それで、交通指導隊員という準公務員の身分を手に入れて、その働きで給料ももらえるし、こっちの世界でも自分のチカラで生活できる基盤が出来たと言えるな。」
「でも、交通指導隊員に任命されたのがやたら早かったですよね? まるでルンちゃんの意見を聞く前に、既に決定されていたかのようなタイミングでしたよね。」
「まあ、その辺に関しては何かオレたちが知らない思惑とかがあったかもしれないが、結果的にはオレ達と行動を共にできて結果オーライになったわけだ。」
「まあ、それはそうですね。おかげで私もルンちゃんと一緒に居られますから。」
「で、まずはここまでが現状の前提となるわけだが、ルンは、今でもその時の気持ちに変わりはないか?」
「うん! これからも、晴兄ちゃんと志穂姉ちゃんと一緒にいたいよ!」
「ありがとう。でも、この前、大勢の人に握手してくれとか言われたり、写真撮られたりしてただろう? ああいうの、ルンは嫌じゃないのか?」
「それは、少しは嫌だけど、わたしの魔法で何とか出来ることもあるし。それに、この前夢に出てきた神様が言ってたんだ。困っている人を助けなさいって。」
「「神様?」」
「うん、この前、セヴル兄たちとお話できた時、夢のお告げがあったでしょ? たぶん、あの人は神様で――、思い出したの。この世界に来て、『けいとら』の中で目覚める前。同じ声――神様が言ってたの。『この世界で、困っている人の助けになりなさい』って。晴兄ちゃんたちのおしごとって、困っている人達を助けたりするんでしょ? だから、私も晴兄ちゃんたちのおしごとのお手伝いをするのが一番いい事だと思うの。」
「そうか」
「だから、この前はいろんな人に声を掛けられてちょっと怖かったけど、でも、それで『こうつうじこ』? に遭う人が少しでも減ったらいいなって思えたから。だから、これからもお手伝いさせて? 晴兄ちゃん、志穂ねえちゃん!」
「ああ、わかった!」
「うえ~ん、ルンちゃんの気持ちがうれしいよ~」
という事で、報告書には、『本人、衆目にさらされることに若干の不快はあるものの、警察業務を行う事は本人の望むことであり、また、そこには神のご意志もあるとのことで、現状の業務に鋭意邁進していきたいと希望している』と記載して提出したのであった。
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