第59話 署長も来ちゃった
ルンが、異世界にいる兄妹たちと通話ができたことを上層部に報告したその日の夜。
駐在所は再び宴会&食事会の会場と化していた。
「いやー、ルンちゃん! 向こうのお兄さんたちとお話ができたそうで! まずはよかったねえ! うん、おじさんも嬉しいよ!」
なんと、今日は署長までもがおいでになっている。
なんでも、例のルンの異世界との通話の件については今日の午前中に課長達幹部に報告したのだが、それを聞いた署長は「お祝いをしなきゃいかん! 今日は俺もルンちゃんに会いに行くぞ!」と、片道2時間ほどかかる晴田市の自宅からわざわざ奥様を呼び寄せたらしい。
県警本部長への報告よりも先に奥様に連絡したというのだから、署長のこの宴会に対する熱意にはな並々ならぬものがあるのだろう。
「はい。ショチョートーチャン、ありがとう!」
お礼を言われた署長が人前に出せない顔になっておられる。
「はいはい、あんまり若い人を困らせてはダメですよ? 年寄りは年寄りらしく、一言お話したらおとなしくしてなさいね」
そこで、署長の奥様が料理を持って現れる。今ここにいるメンツの中で署長をいさめることが出来るのは奥様だけだ。心強い。
ちなみに幹部たちの奥様チームは、オレの官舎と緒方巡査の官舎、両方の台所に陣取って料理を作ってくれている。二手に分かれたのは、単に大人数過ぎて一か所に入りきらないからだ。
おかげで、緒方巡査は両方の台所をいったり来たりしている。女性も大変だな。
大人数と言えば、今ここの駐在所の執務室もえらいことになっていた。
署長をはじめ、副署長、刑事課長、地域課長、交通課長に会計課長だ。警備課長は本日当直勤務のため本署に残っており、なにやら呪詛を吐いていたそうだ。
で、この場所はそんなに広いスペースではないのだが、各々本署の会議室からパイプ椅子を持参してちゃっかり自分のスペースを確保している。ちゃんと明日の朝、元の場所に戻すんだろうなソレ。オレに片付けろとか言いそうだ。
ルンの部屋は壁になるパーティションで区切られてはいるのだが、どこぞの公民館みたいに壁の仕切りの部分が解放可能になっていて、今は絶賛解放中だ。
幹部の皆様は、署長が話し終えた後に入れ替わり立ち代わり、ルンのいる部屋に近寄っていき、一言二言会話を交わしては元のパイプ椅子に戻るといった行動をとっている。
今は副署長が涙を流しながら、ルンの向こうの兄妹との会話を「ほんとによかった」などと話している。これは、皆同じ話をしそうだな。
その後も、騒がしいながらも和やかな時間が過ぎていき、署長の奥様の鶴の一声でようやく解散と相成ったのであった。
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