第57話 異世界通信①

「おはよう」


「おはようございます」


「おはよー!」


 何の変哲もない、いつもの朝の駐在所内。





「「「そういえば」」」



 ん? 声がかぶったな。


「「「あ、お先にどうぞ」」」



 またかぶった!


 このままだとなかなか切り出せない。よし、オレから先に言わせてもらおう。


「じゃあ、オレから。実は、昨日の夜不思議な夢を見てな?」



「「!! わたしも見ました!!」」


 おいおい、なんだ今日のシンクロニティーは。



「で、その内容なんだが、妙に威厳のある男性の声で、『今日はルンから離れず、スマホを肌身離さず持っていろ』って言われてな。単なる夢にしてはなんというか、従った方がいいと思う雰囲気がビンビンというか……」


「「わたしも!! ちょっと違うけどおんなじです!!」」



 おっおう……。


 ルンと緒方巡査の話を聞くと、オレの夢とほぼ内容はおんなじで、向こうは『今日はオレから離れず一緒に居ろ』という内容だったらしい。



「これは何かあるな」


「私もそう思います」


「なにかな? なんか、あの威厳のある男の人の気配、前にも感じたことあるような……」


 そんな会話を繰り広げていたところ、


 ――不意に、オレのスマホに着信が入る。





「知らない番号だ……」


「武藤巡査長、早く出ないと」


「ああ、わかっている」


「なんでだろう、なんか、懐かしい感じが……。」







「—――――――はい、もしもし」


 オレは意を決して電話に出た。どこからの電話なのかわからないので、うかつに名乗ることは避ける。

 

 

『――もしもし。突然すみません。わたし、サトウシンジと申すものなのですが……』


 サトウシンジ、さとうしんじ……、どこかで聞いた名前だ。しかも、ごく最近。


 あ!! あの人の名前と同じじゃないか!


「――! えっ?! サトウシンジさん? 佐藤真治さんってあの、軽トラと一緒に失踪した?!」


『――はい、多分そのサトウシンジで合っていると思います。』


 やっぱり! 失踪したあの人だ! それにしても、この人は今どこに? どこから電話をかけてきているんだ?


「――今、どこにいるんですか?! やっぱり『異世界』なんですか?!」


 オレの尋常ではない驚き様と、『異世界』というキーワードに、周りで不安そうな顔をして見ていたルンと緒方巡査も驚愕の表情を浮かべる。


 すると、


『――こちらからかけておいて大変失礼なんですが、そちら様はどなた様になりますでしょうか?』


 あ、そうだ。こっちはまだ名乗ってなかったな。という事は、向こうもこっちのの事が誰かわからないまま電話をかけてきたという事か。


「――あ、申し遅れました! 自分は、晴田県警丸舘署、上中岡駐在所勤務の武藤と申します!」


 警察と名乗ったからなのか、電話口の向こうに沈黙が流れる。

 それともまさか、通話が切れたんじゃないだろうな。向こうの番号はスマホに記録はされているだろうが、こんな機会がそうそう来るとは思えない。なんとしても、何かしらの手がかりを聞いておかなければ。



「――もしもし? 佐藤さん? もしもーし! 繋がってますか?」


 

 すると、ルンがオレの事を手招きして呼び寄せ、耳打ちしてくる。


「セヴル兄――、セヴラルドって人がいるか聞いてみて!」





 そして、電話口の向こうから、


『――はいはい、繋がってますよー』


 との返答。ああよかった、通話が切れた訳ではないらしい。


「――ああ良かった。伺いたいことが沢山あるんです! とりあえず、その場にセヴラルドさんという方はいらっしゃいますか?」






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