第56話 ガールズトーク

「武藤巡査長! 私たち、これからお風呂に軽トラ風呂入りますので、覗かないで下さいね!」


「あっハイ」


 思わず返事してしまったが、オレは覗いたことは一度もないぞ!


 ただ、うっかりドラレコの動画を見てしまっただけだ。


 だが、どうせそんな反論した所で怒りを増長させるだけだろうから無言を貫く。

軽トラの荷台にお湯を張ったのはオレなのにな。ちょっと解せない。


 それにしても、給湯室の奥に狭いとはいえ、ルン用のシャワールームが出来たのに、いつまで軽トラ風呂に入るつもりなのだろうか?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「はふぅ、やっぱりお風呂はきもちいいですぅ」


「ルンちゃん、やっぱシャワーじゃ物足りない?」


「うん。お水があったかいのはいいんだけど、なんか「水浴び」って感じがして、冒険者時代のように思わず周りを警戒しちゃうんだ」


「そうなんだー。冒険者かー。アニメとかだとよく見るけど、実際は大変なんだろうなー」


「うん、だから、こうして身体を伸ばしてお湯に入るのってとってもリラックスできるの」


「ふーん。ところでルンちゃん! 向こう異世界で気になる男の人とかいなかったの?」


「んー、考えたことなかったなー。いっつもセヴル兄とか、兄妹一緒だったからなー。わたしのことなんかより、早くセヴル兄にお嫁さん見つけなきゃってみんな思ってたから」


「そうなんだー。」


「そんなことより、志穂姉ちゃんはどうなの? 晴兄ちゃんのこと、好きなんでしょ?」


「ばばばばばばばばばっば、ばかなことを言わないでよー! そそそそそそそそそんなことないよー(棒)」


「あー、やっぱり。だって、この前言ってたもんね。セキニン取ってもらいますって。それって、こっちの世界だとお嫁さんにもらってもらう事なんでしょ?」


「まっ、まあ、それはそうなんだけどーーーーー。それは言葉のあやって言うかなんというかかかかか」


「あはは、志穂姉ちゃんかわいー。お顔まっかっか!」


「もう! ルンちゃんったら! ルンちゃんはどうなの? 武藤巡査長のこと、好きになっちゃってないの?」


「んー、晴兄ちゃんはとってもいい人だから大好きだよ? でも、お嫁さんになるとか、そんなことはなんか違う感じっていうかー。うん、わたしにはまだよくわかんないやー」


「そうなのね。でも、もし気持ちがドキドキするとか、そんな感じになったら、私には教えてちょうだいね? なんてったって、私は、ルンちゃんのお姉ちゃんなんだから!」


「そうだね、晴兄ちゃんと志穂姉ちゃんが結婚したら、どっちも本当にこっちの世界のお兄ちゃんとお姉ちゃんになるんだねー」


「いやいやいや、そういう意味じゃなくてー!!!!!(絶叫)」











「ふぇっくしょん!!」


 今夜は、なにやらくしゃみがたくさん出てくる武藤巡査長なのであった……。


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