第51話 映像チェック
早朝、オレは軽トラのドライブレコーダーのハードディスクをチェックした。
決してやましい気持ちからではない。
もし、もしかしたらの話、軽トラの荷台で一糸まとわぬ姿になっている異世界人、ルンの動画なんてものが存在してしまったとしたら。
それはとんでもなく、いろんな面で危険なのだ。
その存在に気づかずに、車検なり、交通課員の車両チェックなりが入ってまかり間違ってそれが世の中に流出してしまったとしたら!
想像するだに恐ろしい。
なので、そんな危険物はないかチェックし、もし存在したとしたらデータのコピー……ではなくて、消去をしておかなくてはならないのだ!
このドライブレコーダーは、いたずらや当て逃げ防止のために、車のエンジンがかかっていなくても周囲で動くものがあれば録画を開始するタイプだ。
という事は!
ばっちり……映っているな。
軽トラがパトカー仕様に改造されたその日の夜の映像。全裸になって湯につかり、身体を気持ちよさそうに洗うルンの姿と、それを見つめる全裸の緒方巡査の姿が映し出されてしまったではないか!
これはいけない! 一刻も早く削除しなくては。
だが、オレには異世界人のルンを保護するという役目がある。
もしかしたら、ルンの身体のどこかに傷とか怪我とかがあるかもしれない。または、なにか元の世界に帰るための手がかりがひょんなところから見つかるかもしれないのだ。うん、これは、やはり一度は目を通しておくべきだな。
身体を洗い終わった二人が、足を伸ばして腰まで荷台の湯につかり、上半身は露なまま何やら話をしている。マイクもついてはいるはずだが、何らかの不具合なのか音声は入っていない。あとで交通課に話しておかなければ。
ん? 緒方巡査がなにやらカメラ目線? そして立ち上がってカメラの方に向かって来て……タオルをかけただと!?
これはつまり、緒方巡査はドラレコのカメラに気付いて、撮影されないように目隠しをした? ということは、撮影されていることに気付いているという事か?
タオルでセンサーを隠されたことにより、モーションセンサーが作動しなくなったのか一旦映像は途切れ、その一瞬の後、撮影が再開された映像では緒方巡査がタオルを取りはずしている。
緒方巡査はいまだ全裸のままだ。隣にルンも現れた。なぜ?
すると、緒方巡査がカメラに向かって何やら話し始めた。音声は聞こえない。その口の動きを追うと、
『せ・き・に・ん・とって・く・だ・さ・い・ね』
そして、今度はルンが
『は・る・に・い・ちゃん・の・えっち』
は……ははは……
オレは覗き見がばれてしまった罪悪感で全身から力が抜けていくとともに、この映像が他の誰かに見られていなくて良かったという安心感とで、なんとも言えない気持ちのまま制服に着替えるのであった……。
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