第50話 聴取の後。
軽トラに乗ったまま失踪した人物、佐藤真治さんの奥様にお話を伺い、オレ達は駐在所に帰ってきた。
今日の夕食当番は緒方巡査だ。
緒方巡査は、先日副署長や課長達の奥様達が大量に作り置きしていってくれた料理の中からとんかつをチョイス。どうやら卵と絡めてカツ丼にするつもりのようだ。
ふむ、そのままレンチンするかと思いきや、意外と家庭的なところがあるんだなと感心していると、どうやら割った卵の殻がカツ丼に混入したらしく、一生懸命箸で手鍋をほじくっている。前言撤回しておこう。
で、無事に夕飯にありついたオレ達の話題は、今日の午後に訪問した、佐藤さんの奥さんへの聴取の件だ。
「ルンはどう思った? 何か感じたか?」
「んーとね、なんだろう。なにかを隠してるような感じはしたかな?」
「ああ、それはオレもなんとなく感じていた。夫が失踪したというのに、あまり憔悴していないというか、妙に落ち着いているというか……」
「もしかして、夫婦仲が冷え切っていたんじゃないですか?」
「そうかもしれないが……」
「なんていうのかな? 悪いことをして隠そうとかしてるんじゃなくてー、なんだろう、知られたら気まずいというか? そんな感じの心の動きだったなー。」
「まあ、奥さんからこれ以上聞けることはないと思う。ダンジョンのことはニュースになってるから知っているだけで、異世界とか、そんなことに興味なんてなさそうだったからな。少なくとも、佐藤家と異世界に密接な関係だとか、何かの因果が繋がっていたとは考えにくいしな」
「異世界と密接な関係のある家ってなんでしょうね?」
「オレも自分で言ってて訳が分からん」
「あ、そういえば、明日リフォームの続きで業者さんが来るみたいですよ? なんでも、ルンちゃんのお部屋の壁の部品ができたのと、あとは給湯室の奥に簡易なユニットシャワー室を付けるらしいです。」
「おお、そうか。じゃあ、軽トラ風呂はもうお役御免になるな」
「「だめです! アレはあれでいいものです!」」
「は、はあ……」
「ということで、今日も軽トラの荷台にお湯を溜めてくださいね、武藤巡査長!」
「おまえは官舎の風呂があるだろうに?」
「だって、あの解放感? そして浅い風呂が醸し出すあの半身浴感? それに、なんたってルンちゃんの裸を見られるちゃんすじゃないですかあー!」
そんな緒方巡査とルンの剣幕に押され、オレは今日も軽トラの荷台にお湯を溜める。
なんだろう、今日の昼に見た緒方巡査のおパンツが妙に心に引っかかる。
あ、そういえば、軽トラがパトカーに改装されたとき、犯人追跡用の全方位ドライブレコーダーが付いていたんだったな……。
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