第48話 うちの旦那が異世界にいっちゃったようです②
うちの旦那が失踪した。
なにやら、『いせかい』とかいうところに飛ばされてしまったようだ。
でも、なぜか電話は通じるのであまり夫がいなくなったという実感はない。
で、夫が失踪した翌日、なんだか全世界中で『だんじょん』というものがあちこちにできたらしく、テレビや新聞ではその話題で持ちきりだ。
一人っきりの食卓でそんなテレビを見ていると、なんだかいつもはそこにいたあの人がいないことが無性に寂しく思えてきたし、能天気に騒いでいるレポーターなんかを見ていて無性に腹が立ってくる。
そういえば、昨日の夜、あの人からの電話があった後子どもたちにそのことを伝えたら、大学3年生の息子の
もしかして、『いせかい』に飛ばされるのって結構普通なことなのかな? ってくらい子供たちはすぐに理解してた。
でもまあ、あの子たちもあの人の事は心配していた。真樹なんかは「異世界はパラダイスだけど場合によっては命の危険もある」とかなんとか。
さすがに、このまま死なれでもしたらやりきれない。
あ、そうだ。あの人の職場に連絡しなくちゃ。さすがに、無断欠勤させるわけにはいかない。
電話が通じるから、あの人が直接電話すればいいじゃないかとも思ったが、それだといろいろ辻褄が合わなくなることは理解した。電話できるんだったら、いいから早く出勤しろとかって言われるだろうしな。
あ、そろそろ私もパートに出かけなきゃ。
あの人がもし戻ってこれないとなったら、あの子たちの大学の学費は私が稼がなければいけない。場合によってはあの人の死亡保険金なんかが入るかもしれないが、今はそんなことは考えたくもない。
――その二日後、夫から再び電話がかかってきた。
『もしもし、さっき50万仕送りで送ったから、あとで確認してくれ』
え? 仕送り?
何をどうやっているのかはわからないが、どうやらあの人は向こうの世界で金を稼いで送ってくれたらしい。しかも50万円も。
普段の給料よりとっても多いじゃない。ぐふふ。おっといけない。平静を装わなくては。
「うん、わかった。職場から電話来てたよ?」
『なんて言ってた?』
「仕事の引継ぎが分からないから、連絡取れたら教えてくれって言ってた。あんたの身の安全とか全然聞いてこないから、心配してないのかなって腹立っちゃった。」
『まあそんなもんだろう。もう少ししたら、警察署に失踪届けも出しておいてくれ。あと、電話が通じるってことはいろいろ面倒臭くなるから家族以外には内緒にしておいてな』
「はいはい。死なないようにね?」
通話は切れた。
よし、明日は警察に失踪届を出しに行こう。すでに警察からは、うちの人が突然軽トラごと消えたところを目撃した人がいるって連絡が来ていたけど、いろいろ慌てていて正式な届け出はまだしていなかった。
そうか、電話が通じることは内緒にしておかなければいけないのね。
わかったわ。だから、来月も50万円の仕送りよろしくね、あなた!
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