第45話 訪問②
「何度もお時間を取ってしまい申し訳ありません。私、丸舘署地域課兼ダンジョン課の武藤巡査長と申します。」
「同じく、緒方巡査です」
オレと緒方巡査で佐藤さんの奥様にご挨拶をする。
ルンは、軽トラから離れられないので軽トラの助手席にいる。
「あともう1名居りますが、ちょっと事情があって車から降りられませんので、失礼しております」
「いえいえ、かまいませんよ。警察さんの事情ですからね。さて、どうぞ、おあがりくださいな」
「ありがとうございます。ですが、大変申し訳ないのですが、差し支えなければ
人によっては、自宅にパトカーや警察官が来たことを近所の人に見られることを異様に嫌うので、玄関先にいる所を見られるのを嫌い、すぐに家の中にあがって欲しいと言われることがよくある。ご近所の噂話になってあることないことを言われるのが嫌なのだろう。
それに配慮して、パトカーではなく普通車モードの軽トラで来たし、オレも緒方巡査もルンも。制服の上に薄い上着を羽織り帽子も脱いで一見警察官とはわからないようにしてある。
だが、佐藤さんの奥様は別にそのようなことを気にしているわけではないらしく。
「はい……構いませんが……。コーヒーとお茶菓子をご用意してるので、どうしましょうか」
なんと、オレ達をもてなしてくれようとしていたが玄関先では茶菓子などを出せないことを気にされているようだ。なんていい人なんだ。
「いえ、その点はお構いなく。我々がぶしつけにも押し掛けた形ですし、どうかお楽にお願いいたします。」
「わかりました。」
奥様の名前は佐藤秋美さん。年齢は失踪した真治さんと同じで50歳。見た目は……まあ、年相応ではある。
夫が突然いなくなった心労とかもあろうかとも思ってきたのだが、今見た限りではそれほど憔悴もしていないし、血色も良い。
あんまり心配していないのか、それとも肝が据わっているのか。
などといきなり訝しがっていてはこっちも表情に出かねない。
こちらの内心を隠すためにもさっそく話を伺っていかないと。
「えー、先日もうちの刑事課の者が一通りお話をお伺いしたかと思うのですが、旦那様の失踪――いえ、突然行方が分からなくなった点について、ちょっと視点を変えてといいますか、もしかしたら突拍子もないようなお話に聞こえるかもしれませんが、色々な方向からお話をお聞かせ願えればと思いまして。」
「はい、何なりと。あと、気を使わなくても大丈夫ですよ。どう言いつくろっても失踪は失踪ですからね」
ああ、見抜かれていたか。
『失踪』という言葉だと、なんとなく本人が自分の意志でいなくなったようなニュアンスを受ける。
残された家族にとってみれば、その言葉は『自分たちを置いて出て行った』と言われているように聞こえるかもしれないのだ。
なので、途中でしまったと思い『行方不明』という言葉に変えたのだが、この奥様はその辺もしっかり了解しておられるようだ。
話が通じる相手でよかった。
「では早速ですが、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます