第43話 昼休みの考察②
テレビ放送の黎明期に、もし、ここみたいな田舎に転移してきていたのなら、異世界からの転移者とはいえ、テレビのスターなんかと見分けはつかなかったのではないだろうか?
その可能性に思い当ってみると、もしかしたらと思しき記載も見受けられる。
異世界人が日本人離れした美貌を持っていた場合。
初のアカデミー賞受賞のナンシー梅木さんとかいるな。でも、こういった人は長年演芸でキャリアを積んでいるはずだから、突然現れたというわけではないであろう。
あとは今の上皇后さまが嫁がれた年でもある。さすがに突然現れた人を皇族に迎えたりはしないだろう。
ザ・ピーナッツがデビューしている。だがあれは双子だ。アキン・ドーは一人、バランスが合わない……!
待てよ! アキン・ドーが一人の人物だとする証拠などない。もしかしたら、当時向こうの世界に転移した数人が、場合によっては数人が時間差、歴代で『アキン・ドー』なる代名詞で存在していたのであれば、多少年代やエピソードがばらついていても納得はできる。
もしくは、こちらとあちらを行き来できていたとか……
ふう。いささか疲れた。限られた情報に踊らされ、思考の迷宮にはまり込んでしまった。
いずれにせよ、この段階で可能性の高い推論を導き出すなど不可能だろう。
そうして、視線をPCの画面からずらすと、そこには起き出してきた緒方巡査と長谷川巡視員、そして部屋のカーテンを開けるルンの姿が目に入る。
「武藤巡査長? 真剣な顔して何を調べていたんですか?」
「ああ、『アキン・ドー』と対になった異世界人はいないかと思ってな」
「あ、私も思ったんですけど、
「もし家族なりが届出していたとしても、その数年間、いや、範囲を広くとれば2~30年間。関西で一体何百人、いや、何千人の失踪届が出されていると思う? そこから絞り込むのは現実的に不可能だろうし、それに60年以上前だ。当時の書類や記録が残っているかも怪しい。」
「えー、いいアイディアだと思ったんですけどー」
たぶん、それくらいはルンのアキン・ドーの話の件を報告すればすぐに警察庁なり大阪府警なりで着手するのだろう。
だが、それでもし失踪した人物を特定できたとしても、そもそもその人物は、今こちらの世界にはいないと思われるのだ。
会う方法がなのだから、事情聴取などもできるはずがない。
そういえば、今回失踪した人物の奥さんが正式に失踪届を提出したらしい。
刑事課で一通り通常の聴取は済んでいるであろうが、オレもスピリチュアルやら因果律やら、オカルト方面も含めての多方面からの話を聞きに行かなければなるまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます