第42話 昼休みの考察①

 アキン・ドーがルンの世界に転移したと思われる1958~1960の日本。

 

 もしかして、ルンのときのように、この年代にも異世界から誰かこっちに来ていたのではないか?


 そう思って自分のデスクのノートPCを起動。食べ終わったラーメンのどんぶりは給湯室で軽く洗って……と、


 給湯室の中には、ルンの部屋? から入れるように壁をぶち抜いてドアが設置されている。

 そのドアが開いていて、そこからは川の字になって横になるルンと緒方巡査、長谷川巡視員のおみ足が見えるではないか。

 

 おいおい、確かに昼休みの時間だから横になって休むのはやぶさかではないが、警戒心がなさすぎないか? 一応男のオレもいるんだぞ?

 それに、うら若き女性たちがラーメン食った後すぐに横になるなんて牛になるぞ? っていうか、お行儀が悪すぎだろ。ルンの教育に悪い。


 だが、そんなことを指摘しても女性の足を見てしまったという負い目から藪蛇になりそうなのであえて何も言わず給湯室を後にする。


 さて、調べ物の続きだ。


 これは決して個人的興味だけではない。もしかしたら、過去にルンが巻き込まれたのと同じような出来事があったのかもしれない。


 もし、本当にそれがあったのなら。


 その件を調べることで、ルンが元の世界に戻れる何かの手がかりが手に入るかもしれないのだ。



 オレはネットを検索する。


 当然のことながら『日本に異世界人きたる』なんてストレートな表記の記事はない。

 似たようなのはあっても、それらはオカルトかスピリチュアル系の物だ。

 まあ、もしかしてそっちの方面に意外にも真実は隠されているかもしれないのだが。


 調べてみると、この年代はわずか数年という間ながら結構いろいろなことが起きている。

 民放各局が相次いで開局していたり、今も発刊されているマンガ雑誌が創刊されたり、南極でタロとジロの無事が確認されただとか、野球関連では王や長嶋といった名選手がデビューしたりとか、車関係でいえばスバ〇360が発売されただとか。

 お、車関係では「エルフ」なんて車も発売されているな。この時代にもエルフなんて言葉があったのには少し驚いた。もしかして、何かしら異世界文化が? その時の転移者はエルフだった? 

 

 なんて想像を膨らませてみるが、核心に迫るものは出てはこない。まあ、当然か。


 なんせ、テレビ放送の黎明期だ。もし、ここみたいな田舎に転移してきていたのなら、異世界からの転移者とはいえ、テレビのスターなんかと見分けはつかなかったのではないだろうか?

 

 

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