第41話 出前ラーメン②
「「「「いただきます」」」」
無事、ラーメンどんぶりのラップ&輪ゴムを外すことに成功したオレ達は昼食にありついていた。
どんぶりの輪ゴムラップ、オレも配属早々にその洗礼にあったものだ。
よりによって『辛味噌ラーメン』を頼んだ当時のオレは、周囲の期待? を裏切らす、見事に白い警察ワイシャツに辛みその赤い飛沫のアートを描いたのだった。
その後、『いったん帰って着替えて来い』という実習先の交番所長さんの優しい言葉と共に、本署での制服をクリーニングに出す手順を教えてもらったのはいい思い出である。
まあ、オレの思い出話はいいとして。
目下、今の問題はルンの事だ。
日本に来て、初めて食べる麺類。
日本に来てからというもの、カレーライスをはじめとして、その使うカトラリーは全てスプーンかフォーク。
ラーメンを食べるのに、金属製のフォークではスープの熱で熱せられたフォークの熱さが味覚の邪魔をするのではないか? それに、ずるずると音をたててすする日本特有のあの醍醐味を味わえないのではないのか?
そんな心配をよそに、
ずるずるずる
「なんだ、ラーメンって、『チキラー』の事だったんだね! あっちでも食べたことあるよ! でも、高かったから2回くらいしか食べたことないけど! うん! やっぱりおいしい!」
なんと、ルンは器用に箸を使って味噌ラーメンを豪快にすすって食べていた……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この『チキラー』という名称の食べ物。
以前話に出てきた『アキン・ドー』なる人物が怪しい。
『チキラー』とは、某食品会社が大阪で1958年に初めて発売したという某インスタントラーメンの略称ではないのか?
で、以前のルンの話によるとその人物が乗っていたという魔道具はタイヤが3つ。つまりオート3輪の事ではないのか?
オート3輪は1930年代に発売され、1950年代に隆盛を極めたとあるので、その年代の日本の人物がルンのいた世界に飛ばされて、『チキラー』を広めたという推論が成り立つ。
なのだが。
「一昨日にナイター見てた時、ルンは『これが本当のおおさかたいがーすか』なんて言ってたんだよな」
『大阪タイガース』とは、1936年に発足した、現在の阪神タイガースの事である。
戦争時には敵性言語のカタカナを撤廃して『阪神軍』となった名称が、終戦後の1946年にふたたび『大阪タイガース』となり、1961年に、現在の『阪神タイガース』になっている。
タイガースの1936~1961年とオート3輪の1930~1950年代、そしてチキラーの1958年。
この範囲で共通しているのは、1958~1960の狭い範囲の年だ。
そんなこと考えているうちに、
もしかして、ルンがこの世界に来た時に1人の人が失踪したように、この年代にも異世界から誰かこっちに来ていたのではないか?
そんな疑念が頭をよぎった。
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