第36話 解熱
ルンを軽トラの荷台に乗せたオレ達は、丸舘署に到着した。
待ち構えていた刑事課長や地域課長が、軽トラを車庫の中に誘導する。
車庫の中には、先日主治医が来た時に簡易の診療所となった仮設テントが張られており、緒方巡査と、少し遅れて到着した巡視員の長谷川さんがルンを担架に乗せて運び入れる。
いまだルンの意識は戻らないが、激しかった呼吸は落ち着いてきており、小康状態なのだろう。
それから15分ほど経過し、爆音とともに署の屋上にDrヘリが着陸し、主治医の大学病院の教授様が他2名の女性医師か看護師かを連れて車庫に到着する。
医師が診察に入って十数分後、テントから出てきた医師が大丈夫だと告げ、署長をはじめ集まった署員たちは安堵のため息をつく。
医師の説明によると、どうも知恵熱のような類の症状であったらしく、点滴をして今は意識も戻り、発熱も落ち着いている。
また、先日の検査結果も含め、ルンの身体は地球の人間と全く同じ組成であり、軽トラから離れられない理由は、いまのところ医学的には不明とのこと。
医師が帰ったあと、署長たちはテントの周りでやきもきしていたが、まさか病人で、且つ女性であるルンの病室? テントに踏み込むわけにもいかずその周りをうろうろしている。
テントから顔をのぞかせた緒方巡査が、長谷川さんと一緒にルンを支えてテントから出てくる。
ルンは、顔色は悪いが目に力がある。大丈夫のようだ。
「ルンちゃんが、早く
すぐに頷く早坂と長谷川さん。軽トラの荷台に乗り込むルンと緒方巡査を、署長はじめ署員みんなが心配そうな目で見つめている。
「武藤! 何かあったら連絡よこせよ! うちのカミさんを向かわせるから!」
「武藤君! 荷台に人を乗せるときは、パトランプ点灯させておけよ!」
恩田刑事課長と交通課長が声をかけてくる。
了解ですと返事をして、オレ達は駐在所に帰ってきた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ルンを自室? である3畳の小上がりに上げ、緒方巡査が布団を敷いて寝かせている。
まだパーティションの部品が届かず壁に当たる部分のリフォームが終わっていないので、オレはカーテン越しに声を掛ける。
「話しをしても大丈夫か?」
「うん、晴兄ちゃん。大丈夫だよ」
「そうか、あの時何があったか話せるか?」
「うん。なんて言ったらいいのかわからないけど……。とてつもないものがあの場所に流れ込んだみたい……。そして……その中に……一瞬だけど、わたしも見えたの」
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