第32話 捜査会議

「この件はトップシークレットだ。マスコミはシャットダウン、他の署の連中にも、そして家族にもこの内容は言わないこと! 以上!」


 あれ?


 家族にも言わないこと! って……? 課長? それに副署長も他の課長たちも、この前を伴って駐在所に来ましたよね?


 そんな疑念を抱いて恩田課長を見ると……目をそらした!


 同様に副署長や他の課長たちもオレから目をそらす!


 なんだろう、この上司の秘密を知ってしまったような気分は。


 続いて、目をそらしたままの地域課長がマイクを取る。器用だな。


「えー、くだんの件につき、例の彼女はとある事情から上中岡駐在所にて保護しており、現在武藤巡査長と緒方巡査がその任に当たっている。くれぐれも、興味本位で当該駐在所を訪れたり、彼女に無用なストレスを与えたりすることのないように! えー、他には、地域課は明日から、『ダンジョン課』をも兼ねることになるので地域課諸君のより一層の奮起を期待したい。以上。」


 あーあ、地域課長、とうとうオレから目をそらしたまま話し終えちゃったよ。

 恩田課長にせよ、地域課長にせよオレからすれば「どの口が言ってるんだ」って感じになるもんな。まあ、課長たちは興味本位でルンに会いに来たわけではないとはわかってはいるが、それでもやはり後ろめたいのだろう。


 そこで、隣に座っていた交通課の同期、早坂が話しかけてくる。


「武藤さん、とある事情って何すか?(ひそひそ)」


「ああ、なぜかオレの軽トラから離れられないんだよ(ひそひそ)」


「なにを言ってんのかよくわかんないっす(ひそひそ)」


「安心しろ、オレもだ(ひそひそ)」





「では、捜査計画書に従って行動するように! 解散!」


 副署長の一声で解散となる。



「武藤巡査長、私たちは、ルンちゃんと一緒に軽トラの消えた場所の見分と、目撃者、消えた方の奥さんからの聴取ですね」


 早坂の反対側の隣に座っていた緒方巡査が捜査計画書を見て話かけてくる。


「ああ、さっそく向かおうか」


「交通課員の手伝いはいらないっすか?」


「いや、早坂には他の役目がついてるじゃないか。ほら、国道で検問だとよ」


「えー、検問嫌いなんっすよ。車止めるとみんなに嫌な顔されるし……」


「早坂! 何してる、行くぞ!」



 ほーら怒られた。


「はいっ!」


 上司に怒鳴られた早坂は走って交通課パトカーに向かっていった。

 

 これから3時間ぶっ続けの検問なんて、考えただけで気が滅入る。


 早坂も言っていたけど、あの車を止めた時の、運転手さんの「急いでるんずけどなんすか」みたいな表情を向けられるのは結構心に来るのだ。まあ、そんなのには慣れ切っている上司や先輩も多いのだが。そういう人が出世していくんだろうな。しらんけど。



 さて、ルンはどうしてるかな?




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