第31話 捜査本部設立
副署長や課長たちが駐在所を訪れ、予期せぬ宴会が繰り広げられた3日後。
オレは、丸舘署の会議室にいた。
オレだけではない。署長をはじめ、現場に残る当番の者を除いた、非番の者も含む全署員がその会議室に集められていた。
ちなみにルンは、署の電話交換室にいる。軽トラを署の正面の車寄せに入れたところ、交換室は半径5m以内に入ったのだ。いまごろ、電話受付のおばちゃんとお菓子でも食べているだろう。
で、ほぼ全署員が会議室に集められた理由。
それは、「失踪事件」の捜査本部立ち上げである。
冒頭、署長からの訓示がある。
「えー、まずはこのように集まってもらい、特に非番の署員には苦労を掛ける。一昨夜、日本、いや、世界中にダンジョンが発生したのは皆も知っての通りだ。幸いというか、我が署管内ではダンジョンの発生はなかったが、県内各署ではダンジョン発生事案が相次いで発生しており、その対応に追われている。」
そのような前置きを置いて一息つき、さらに署長は話し始める。
「そんな中、我が署管内では別の重要事案が発生した。ダンジョンの発生の原因となる『異世界との繋がり』の件については手元の資料に詳しく書いてあるので目を通せ。」
署長はさらに一息おいて咳ばらいをする。
「それでだ。我が署管内で、その異世界とのゲートなるものが発生した可能性が高い。その発生に巻き込まれたと思われる行方不明者が1名発生している。今回の捜査本部設置の目的は、その行方不明者の捜索という名目で設置される。ああ、くどいようだが、今回の事案は非常に保秘性が高い。家族と言えども口外しないよう徹底する事。詳細は刑事係長から説明してくれ。」
「えー、刑事課長恩田だ。大まかなことは署長のおっしゃられた通りだが、俺からは細かいことを補足する。今回の目的は、突然軽トラごと姿を消した人物の捜索にあることは間違いないのだが、おそらく、皆の予想通りその人物は軽トラごと『異世界』に飛ばされたのだと思う。したがって、我が署管内、いや、この地球上で見つかる可能性は著しく低い。だが、その人物と対になって異世界から我が署管内に現れたと思われる人物がいる。」
そこで、会議室のあちこちから「あー、やっぱりあの子か」みたいなつぶやきが聞こえてくる。
「そうだ。皆も見た通りかわいい子であり、そして不憫だ。我々の真の目的は、異世界と繋がる場所なり手がかりを見つけ、あの子を家族のもとに返してやることだ! もちろん、失踪した人物もそれに合わせてこちらに呼び戻せれば越したことはない。
そして繰り返す! この件はトップシークレットだ。マスコミはシャットダウン、他の署の連中にも、そして家族にもこの内容は言わないこと! 以上!」
あれ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます