第24話 知られざる異常事態①
――とある米軍観測基地
「おいおい、何てクレイジーなんだ! 敵さんの攻撃か?」
「いや、こんな広範囲な現象、人の手には余るだろうさ。おそらく、敵さんもおんなじことを思っているんじゃないか! HAHAHA!」
この日、アメリカ全土にある軍属、あるいは空港、気象観測装置等の設備のある施設では、同時刻に重大な現象を観測していた。
同時刻、日本の自衛隊や気象庁でも。
世界、おそらくは地球上すべての場所でタイムラグなく発生したその現象は、後に、
『時空震』
と呼ばれた。
世界中すべての、何らかの事象を観測するために設置されたすべての機器が、同時刻にほんの一瞬、時間にして1万分の1秒にも満たない時間、極大な異常数値を観測したのだ。
地震計は、巨大な地震波を。
気圧計は、急激な気圧変化による衝撃波であると言われる空震を。
建物すべてを倒壊させ、地面に立つものが皆無になるほどと思われる、これまで人類が経験したことのないような規模の大きな地震波。
それによる影響は、地上全てを更地にしてもまだ足りないであろう。
世界中全ての活火山、休火山が一斉に爆発を起こしたかのような激しい低周波の、空気の衝撃波であり、音波が超音波と化して分子結合が乖離するほどの振動をひきおこすほどの空震の数値。
しかし、それらの衝撃は人体では感知できず、いや、感性の鋭い人ならば一瞬の空震を、「空が鳴った」と感じたかもしれないが、ほんの一瞬にも満たない時間の出来事でもあり、そのほとんどの人が、気のせいだと片づけただろう。
これらの観測機械に計測されるエネルギーを概算すれば、およそ地球を2千回以上は滅する事の出来るだけの原子爆弾が必要となる。
しかし、地震は起きず、火山の噴火も起きてはいない。
地震の起きない地震波。火山噴火のない空震。
いったいこれだけのエネルギーは、どこでどのように発生したのか、いや、そもそも実際に発生したのか。
むしろ、世界同時にすべての観測機器がエラーを起こしたといった方が、まだ確率も信憑性も高い状況だ。
そんな出口のない推論の坩堝の中で、議論に方向を付けた二つの現象がある。
それは、
高度の高い山頂等に設置された『原子時計』が、計測各地点における時間の流れの不連続で不安定な無秩序の狂い――時空のゆがみを検知していたこと。
そして、その現象からほんの少しの時間をおいて確認された事実。
世界中での地下迷宮の突然発生。
この二つの現象をもって、世の学者たちは、推論をこう統一した。
――異世界との、ゲートが開いたのだと。
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