第23話 夕食の話題

「ふう~、さっぱりしました。軽トラの荷台でお風呂ってのもオツなものですね~。これでもう少し深さがあれば……」


 緒方巡査が風呂上がりだ。だから、なぜお前まで入る……。


 で、当のルンはと言えば、


「とってもきもちよかったです! まるでお貴族様になったみたい! これからは『清潔クリーン』の魔法なんて封印します!」


 いやいや、毎日入れると決まったわけじゃないからな?


 そんなルンの服装はスウェット上下だ。ん? 胸の部分に突起が二つ……。そうか、まだこっちに来ての下着とか買ってないからな。そのスウェットも緒方巡査のモノだろう。ということは、いまルンは裸に直でスウェットを着ているのか。


 オレの目線の位置に感づいた緒方巡査が、軽蔑したような眼を向けてくる。いや待て。これは恣意的なものじゃない! 警察官特有の観察眼職業病なんだ!


「ということで、私はこれからルンちゃんの下着とか私服をひと揃え買いに行ってきます。サイズは直に触って確認しましたので! むっふっふ……ゴホン。ほんとはルンちゃんと行きたいけど、ルンちゃんをこんな格好で外に建物の出すわけにはいかないし……。あ、洗濯機回してますけど、わたしの下着とかも入ってますので終わっても開けないで下さいネ!」


 だれが開けるか!


 そう言うと、緒方巡査は髪を急いで乾かして自分の私用車で出かけて行った。おいおい、軽トラ風呂で髪まで洗ったのかお前は……ルンならともかく、お前の官舎部分にも風呂はあるだろうに。


 さて、もう夕方だ。なんだかんだで昼は本署で待機中に食ったパンだけだったから腹が減った。

 緒方巡査の帰りを待つ間、飯くらいはオレが作ってやろう。


「ここでちょっと待っててな。自分の官舎でメシ作ってくるから。」


 オレはそう言って、ルンが見れるように執務室内のテレビをつける。


「……! 何! 箱の中に人がいるよ!」


 おお、定番の驚きセリフをありがとう。ゆっくり見ているがいい。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なにこれー! おいしいー!」


 ルンの居住スペースにちゃぶ台を置いて、3人でカレーを食べている。


 ルンは初めて食べたカレーに感激もひとしおのようだ。


「ところで武藤巡査長、どう思います?」


 なにがだ、とは聞かない。

 オレも同じことを思っていたからだ。


 署長をはじめ、本署の幹部のルンへの対応、および順応が、のだ。


「おそらくだが……、ダンジョンとか失踪事件とかがらみで、県警本部とか、警察庁とか、そんなレベルから幹部限定警部以上でマル秘の通達とかでも事前に出てたんじゃないか?」


「ああ、事前に……。そうですね。それくらいじゃないと、あの対応はありえないですよね」


 実際には、警察庁だけでなく内閣府とか防衛省とか外務省とか、そんな国の中枢部からの緊急通達が昨夜のうちに発せられていたとまでは思いもよらなかった。

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