第16話 リフォーム大作戦
一緒に住むことになったルンの生活スペースについてどうするべきかと考えていると、暇なはずの駐在所にトラックが3台ほど入ってきた。
「ちわーっす、笹館工務店ですー! リフォームに参りましたー!」
何? リフォーム? 何も聞いてないぞ?
そのとき、執務室内に戻って不在を解除した警電に着信がある。
電話に出ると、地域係長だった。
「そろそろルンちゃんの寝る部屋を作ってもらうリフォーム業者が行く頃だからよろしく頼む」
そう言って切れてしまった電話を見つめていると、今度は一般回線のFAXが動き出す。
そのFAXには、駐在所の執務室部分のリフォーム後の大まかな図面が書かれてあった。
どうやら、オレが気をもむよりも早くに本署の幹部の方々は居住場所問題に対し、答えも対応も済ませてしまっていたようである。
で、図面を見てみると。
本来の執務室スペース内の応接セット(簡易なテーブルとソファー椅子)があったところに、旅館の小上がり的に膝高まで床がかさ上げされ、その部分が寝室スペースとして畳張りになり、周囲をパーティション的な壁で覆うらしい。防音が不安だなと思ったが、どうやらパーティションは防音材入りのしっかりした物のようだ。
そのパーティションの一部に出入り口用のドアが取り付けられるのだが、そのドアを通るとトイレまで迂回しなければならす、その導線が5メートル範囲から外れてしまう。
どうするのかと思ってさらに図面を見ると、その小上がり部屋と壁一枚で隣接した給湯室との間の壁をぶち抜き引き戸を付けるらしく、これによってトイレへの導線も確保されるし、ルンが給湯室の設備を使っての簡単な調理や、湯茶も自由に飲むことが出来る。
だが、スペースというものはどこかを広げればどこかを狭くしなくてはならないものであって、
「オレの仕事スペース狭すぎねえか?」
そういえば、緒方巡査もこの駐在所に異動してくるのだ。普通で考えれば、執務机は最低二つは必要なはずなのだが。
なんで一つの机に椅子が二つ置かれているんだろう?
図面の中では駐在所の入口に向けられた一つの執務机に椅子が二つ置かれており、そこにオレの名前と緒方巡査の名前がある。
執務机の前には、本当に簡易な、一人用の簡易テーブルと向かい合わせに座る二つのパイプ椅子。ここで来客応対をしろという事なのだろう。
ちなみに駐在所奥の取調室はトイレの隣であり、ぎりぎり部屋の3分の2が5メートル範囲に入る細長い部屋には『ルンちゃんの私物入れ部屋』と書かれており、どうやら取り調べもこの簡易テーブルのところでやらなければならないらしい。密室でなくて大丈夫なのだろうか。犯人とかには逃亡されないように気を付けなければ。
それにしてもこのリフォーム業者、妙に仕事が早いな。というか、ルンの存在ってトップシークレットだよな? 業者に口止めとかしてるのかな……
はあ、命令なんだから仕方がない。これからは狭い空間で、緒方巡査と二人横に並んでノートPCをカチャカチャやるしかないのか。
それにしても――、寝起きとトイレ、食事もなんとかなるだろう。だが、若い女性に必要なもう一つの要素、
風呂はどうしたらいいんだろう?
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